原子層成長(読み)ゲンシソウセイチョウ

化学辞典 第2版 「原子層成長」の解説

原子層成長
ゲンシソウセイチョウ
atomic layer epitaxy

結晶成長原子のレベルで制御して,1層ずつ成長させる方法のこと.周期表12~16族半導体であるZnSの成長方法として開発されたが,現在では半導体のみでなく絶縁体にまで応用されている.はじめに実現された方法は,蒸気圧の高い2種類の原料が基板表面で化合物になると蒸気圧が下がり,蒸気圧差により吸着が進まなくなることを利用した.清浄なS表面にZnを照射するとS表面をすべて覆うまで吸着し,表面はZnSで被覆される.Zn単体の蒸気圧が高いので,1原子層以上のZnが吸着しても脱離して過剰なZnの吸着は進まない.次にZnを排気後,S2 を照射すればZnが1原子層吸着する.また,自己停止(セルフリミット)機能と自己停止解除の機構を用いた方法も考案され,ZnCl2とH2Sの組合せによるZnS,トリメチルガリウム(CH3)3GaとアルシンAsH3の組合せによるGaAsや,SiH2Cl2と原子状のHの組合せによるSiの原子層成長などがある.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報