前進翼(読み)ぜんしんよく(英語表記)sweepforward wing

日本大百科全書(ニッポニカ) 「前進翼」の意味・わかりやすい解説

前進翼
ぜんしんよく
sweepforward wing

前進角のついた翼。航空機の揚力を発生させる主翼左右の端が、翼の付け根より前側にある翼のことで、高速飛行において衝撃波の影響を小さくして空気抵抗の増大を防ぐという、後退翼と同じ特性をもつ。また、機体全体のサイズを小さくできるので航空母艦格納庫など、狭いスペースにより多くの機数が収容できる特徴がある。

 構造的には後退翼とは逆に、翼根失速をおこすとか、空力(くうりき)的な力が加わった場合ねじり上げとなって破壊しやすい、などの欠点があり、従来軽合金主体とした構造では実現がきわめてむずかしかった。しかし、最近では複合材料を利用して構造上の欠点を補うことができる見通しがつくようになり、将来は広く使われるものと期待されている。

[落合一夫]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内の前進翼の言及

【翼】より

…アスペクト比が小さくなるほど揚力傾斜は小さくなり(図2-b),同じ揚力係数を出すのに大きな迎え角を必要とするようになり,アスペクト比2の翼ではCL=π(α-α0L)に近くなる。また後退翼や前進翼では直線翼より揚力傾斜が減る。揚力係数の最大値(最大揚力係数CLmax)は翼型により異なり1.0~1.8程度であるが,高揚力装置をつければもっと大きくできる。…

※「前進翼」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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