分子認識(読み)ブンシニンシキ

化学辞典 第2版 「分子認識」の解説

分子認識
ブンシニンシキ
molecular recognition

分子がほかの分子を見分ける現象酵素が基質を見分ける特異性を説明する一つの仮説として,“と鍵穴”の概念があるが,これに対する分子論的基礎概念である.分子がほかの分子を見分けるのは,ファンデルワールス相互作用,電荷移動相互作用,π電子間相互作用,イオン結合水素結合などの分子間相互作用による.生命現象において,酵素,DNARNAなどが生命活動に必要なタンパク質,ホルモンなどをつくる際に遺伝情報を伝える相手を選び出す現象でもあり,味覚嗅覚など,生命現象の理解に重要な研究対象となっている.また,化学現象としても,1967年にクラウンエーテルアルカリ金属やアルカリ土類金属を選択的に取り込む現象が発見されてから,分子認識能力をもつ化合物を人工的に合成するホストゲスト化学という新しい研究分野も生まれた.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

デジタル大辞泉 「分子認識」の意味・読み・例文・類語

ぶんし‐にんしき【分子認識】

分子がある限られた化合物に対して親和性や選択性をもつこと。生化学分野で広く見られ、DNAたんぱく質抗原抗体の間で分子認識が有効にはたらいていることが知られる。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

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