味覚
みかく
taste sensation
gustatory sensation
gustation
味覚器によって味溶液が検知された結果、生起される感覚を味覚という。味覚は単に飲食物の選択や享楽にのみ意義があるのではなく、生命維持のうえからも重要である。副腎(ふくじん)を摘出されたネズミは、血中のNaCl(塩化ナトリウム)濃度が低下するため、NaClを選択的に摂取する。また、味神経を切断すると、NaClの選択的摂取は停止し、ネズミはまもなく死んでしまう。ヒトの新生児は、すでに味質を識別する能力をもち、甘味物質は摂取するが、苦味や酸味物質は拒否する。味覚は唾液(だえき)分泌、胃液分泌、膵液(すいえき)分泌や胆汁(たんじゅう)分泌などの調節に関与し、内部環境の恒常性維持のうえからも生物学的意義がある。
[佐藤俊英]
食物によっておこる味覚は多種多様のようであるが、それはいくつかの基本味(原味)から構成されると考えられている。基本味は甘味、酸味、苦味および塩味(えんみ)(鹹味(かんみ))の四つである。ドイツの心理学者ヘニングH. Henningは、4種の基本味を四面体の頂点に置き、種々の味はその面上または内部の1点で表現できると考えた(1921)。これを「味覚の四面体」という。食物を味わうときは、味覚のみならず、嗅覚(きゅうかく)、触覚、温度感覚なども関与するが、これらの総合した感覚を「風味」という。
甘味物質はOH基(ヒドロキシ基)をもつ糖類、アルコール、グリセロールなどに多いが、なかには、サッカリンのようにOH基をもたないものにもある。甘味物質には共通して水素供与基と水素受容基が存在し、互いに2.5~4オングストローム離れているという。酸味は水素イオンの味であるが、陰イオンも影響を与えている。同一水素イオン濃度(pH)でも、酸の強さは 酢酸>ギ酸>乳酸>硝酸>塩酸 の順となる。苦味物質はMgCl2(塩化マグネシウム)などの無機化合物に多く、有機化合物では、ブルシン、カフェインなどのアルカロイドが代表的なものである。なお、苦味物質と化学構造との関係は不明である。塩味を有する代表的塩はNaClである。NaCl、KCl(塩化カリウム)、NaI(ヨウ化ナトリウム)などは、それぞれに味が異なるが、これは、塩味が塩の陽イオンと陰イオンの両者に依存するためである。
味覚はおもに舌面でおこるが、ほかに軟口蓋(なんこうがい)、咽頭(いんとう)、喉頭(こうとう)でもおこる。水と区別できるある味物質の最小濃度を「検知閾(いき)」、味質を感知しうる最小濃度を「認知閾」という。ヒトの舌面や軟口蓋といったそれぞれの部位では、四基本味物質に対する感受性には差がある。アメリカの心理学者コリングズV. B. Collingsは、1974年、「塩味と甘味の閾値は舌先部でもっとも低く、酸味は舌縁部でもっとも低く、そして、苦味は軟口蓋でもっとも低い。しかし、刺激濃度を増すといかなる部位にも四基本味が生じる」という測定結果を発表している。フェニルチオカバミド(PTC)は苦味物質であるが、少数の人には高濃度で初めて苦味をおこす。PTCおよび関連物質で感受性の低い人を「PTC味盲(みもう)」という。日本人には約10%みられ、メンデルの劣性遺伝をする。味覚閾値は味溶液の温度で変化する。また、最低の閾値を示す温度は味質で異なるが、だいたい22~32℃である。
[佐藤俊英]
味覚の受容器(味(み)受容器)は味(み)細胞である。昆虫の味細胞は肢(あし)の跗節(ふせつ)や口器、触角などにある感覚毛に含まれている。脊椎(せきつい)動物の味細胞は味蕾(みらい)の中にあり、一般に口腔(こうくう)の舌、軟口蓋、咽頭、喉頭にみられるが、魚類では体表やひげにもみられる。哺乳(ほにゅう)動物では、味蕾は口腔内に集まり、おもに舌に点在する茸状(じじょう)(きのこ状)乳頭、葉状(ようじょう)乳頭、および有郭乳頭にみられる。
[佐藤俊英]
味覚を伝達する神経は、顔面神経(脳神経のⅦ)、舌咽神経(同じくⅨ)および迷走神経(同じくⅩ)である。舌の前3分の2部の味蕾からの求心神経線維は、舌神経および鼓索(こさく)神経を経由して顔面神経に達する。舌の後ろ3分の1部の味蕾は舌咽神経が支配し、下咽頭や喉頭蓋の味蕾は迷走神経が支配する。軟口蓋の味覚は顔面神経の分枝の大浅錐体(だいさいすいたい)神経によって顔面神経に伝えられる。これらの三つの神経は延髄の孤束核(こそっかく)でシナプス(神経接合部)をつくる(図A)。ついで第二次ニューロンは同じ側の内側毛帯に加わり、視床後内側腹側核(視床の味覚野)に入って第三次ニューロンに切り替わったあと、大脳皮質味覚野(前頭弁蓋(べんがい)部)に至るというのが従来の味覚伝達の定説であった。しかし最近のラット、ハムスター、ネコ、ウサギなどの研究によると、延髄の孤束核と視床の味覚中継核との間の橋(きょう)背側部の結合腕に味覚中継核(橋味覚野)のあることがみいだされている。この橋味覚野からの第三次ニューロンは、視床を経由して大脳皮質に行くものと、視床に至らず、前頭部腹側の扁桃核(へんとうかく)、分界条、視床下部などに投射するものとがある(図B)。前者の経路は味を判別する認識性投射経路であり、後者の経路は飲食物の摂取や忌避行動を引き起こす情動的判断を下す経路と考えられる。なお、サルやおそらくヒトの場合は、孤束核からの味覚性ニューロンは直接視床の味覚中継核に行き、さらにここから大脳皮質味覚野の前頭弁蓋部に投射すると思われる。
[佐藤俊英]
味質の強さを伝える神経情報は味神経のインパルス頻度である。しかし、単一味細胞の多くは四基本味液の複数に応答(受容器電位を発生)するので、各味質の情報を専用に運ぶ味細胞は存在しない。また、第一次味覚ニューロンや延髄・橋・視床・大脳皮質の味覚中枢ニューロンの応答性を比較してみると、低次から高次のニューロンに移るにつれて各種味刺激に対するニューロンの選択的感受性が増大するという事実も認められない。つまり、すべての部位で単一ニューロンは多様な感受性を示すわけである。
アメリカの生理学者エリクソンR. P. Ericksonらは「味質情報は低次ニューロンから高次ニューロンのすべてにおいて、多数のニューロンの興奮の空間的パターンによって伝えられる」という考えを提唱している(1965)。この味質の相似した物質は相似した興奮パターンをつくるという考えは「アクロス・ニューロン応答パターン説across-neuron response pattern theory」とよばれる。他方、味覚性ニューロンは、四基本味液のいずれの液に最大応答を示すかを基準として4群に分類され、四基本味質の情報はそれぞれに独立した4種類の神経線維のチャンネルを通って伝達されるという考えも出されている。これを「固定ライン説」という。この考えに基づいて分析した結果、末梢(まっしょう)から大脳皮質に至るまで、各味質には、それぞれ対応する興奮伝達チャンネルが存在していることが明らかとなった。また、大脳皮質味覚野内では、各チャンネルに対応する投射部位は相対的に異なることもみいだされている。したがって、多種多様な味の識別機序(メカニズム)については、アクロス・ニューロン応答パターン方式と固定ライン方式との両方が関与するとするのが妥当であろう。
[佐藤俊英]
『栗原堅三著『味覚』(1978・東京大学出版会)』▽『佐藤昌康編『味覚の科学』(1981・朝倉書店)』
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みかく
味覚
sense of taste,gustation(英),Geschmackssinn(独)
口腔内に取り込まれた物質の化学的刺激によって生じる味の質や強さの感覚を味覚という。たとえば,飴をなめると甘くておいしくにこやかな表情となり,レモンを口にすると強い酸味のために思わず顔をしかめ唾液が分泌されることからもわかるように,味覚とともに快-不快の判断や反射活動が連動して生じる。味には甘味,うま味,塩味,酸味,苦味の五つの基本味basic tasteがある。甘味の代表的物質はショ糖で,低濃度から高濃度にわたり快感を呈する。一般的に,甘味は体に必要なエネルギーの源を摂取している信号だと解釈されている。うま味は昆布に多く含まれるグルタミン酸ナトリウムや鰹節に多いイノシン酸ナトリウムの味で,タンパク質摂取の信号である。食塩に代表される塩味はミネラル摂取の信号,クエン酸などの有機酸の酸味は代謝促進の信号,腐って乳酸発酵したときの酸味は腐敗物の信号である。苦味は毒物,有害物の警告信号である。酸味や苦味は体が避けるべき味であるから,人間は低い濃度から検知できる能力をもつが,グルタミン酸ナトリウム,食塩,砂糖など体が必要とする物質の味はより高濃度で感じる。これらの味覚感受性には人種差,性差がほとんどない。日本人は,他の国の人に比べて繊細な味わいができるから味覚が優れていると思われがちであるが,基本味に対する末梢の受容体や味覚中枢における味の識別能に差があるのではなく,食べ物の味の評価の仕方において差があるのである。味わいの能力は食経験により学習し,身につくものである。
食べ物の味は各基本味の組み合わせで生じるが,味には基本味では説明できないものがあり,特殊味覚とよばれる。これは口腔粘膜の触覚や温覚,冷覚,痛覚など味覚以外の感覚であったり,味覚との複合感覚としてとらえられたりするもので,油のおいしさ,香辛料の辛み,炭酸飲料の発泡性の味,渋味などが相当する。
【味覚地図taste map】 味の感受性は舌の部位によって異なり,甘味は舌の先端部,塩味は舌前方部,酸味は舌縁後部,苦味は舌根部で感じるとされている。これを舌の味覚地図という。舌の部位によって味覚感受性が異なることを最初に報告したのはドイツの心理学者ヘーニッヒHänig,D.P.である。彼は,舌の部位によって味を感じる閾値(最小の濃度)がやや異なることを,1901年に報告した。それ以後,あたかも甘味は舌の前の方でのみ感じて,苦みは舌の後の方でのみ感じるといったように誇張されて世界中に広まった。正しくは,舌の場所により極端な感受性の差が存在するのではなく,若干の感度の差はあるものの舌のいろいろな部位でどの味も感じられるのである。
【味覚経路】 味の刺激を受け取る最小の構造物は,花の蕾に似ているので味蕾taste budとよばれ,その中には細長い紡錘形をした味細胞が50~100個集合している。味蕾は,舌前方部に散在する茸状乳頭,舌縁後部の葉状乳頭,舌根部の有郭乳頭に存在するほか,軟口蓋,咽頭部,喉頭部にも認められる。味蕾総数は,舌に約5000個,舌以外に約2500個とされている。
味細胞は,外界からの化学刺激を受容し,電気的な信号に変換する。甘味,苦味,うま味を生じさせる物質は,味細胞に発現するタンパク質共役型受容体によって検知され,塩味と酸味を生じさせる物質はイオンチャンネルによって検知される。甘味とうま味の検知には,T1R(taste receptor type 1)受容体ファミリーが関与しており,甘味はT1R2とT1R3の二量体によって,うま味はT1R1とT1R3の二量体によって受容される。また,苦味は数十種からなるT2R受容体ファミリーによって受容される。塩味の受容体は,ENaC(上皮性ナトリウムチャンネル),酸味の受容体はTRPチャンネル(transient receptor potential channel)分子(PKD1L3とPKD2L1の二量体)と考えられている。
個々の味細胞はこれら五つの基本味に対応する受容体のいずれか一つを優先的に発現するので,五つの味の識別は味細胞レベルですでに行なわれていることになる。砂糖を口に入れると砂糖の分子が甘味受容体に結合し,味細胞を興奮させ,神経線維を介して情報が脳に送られ,甘い,おいしいと感じる。キニーネを口にすると苦味受容体に結合し,同様に脳に送られた情報は分析されて,苦い,まずいと感じる。味細胞には,おいしさ受容体,まずさ受容体といったものは存在しないので,砂糖によって興奮した神経情報の中に甘味とおいしさの情報が混在していて,脳での処理部位,処理様式の違いで甘いとおいしいに分かれて分析されるのである。
味覚神経は味の情報を延髄の孤束核に運ぶ。孤束核からは視床の味覚野thalamic taste areaに至るが,その途中で顔面表情変化や唾液,消化液,インシュリン分泌といった反射活動を生じる。視床味覚野からの入力を受ける大脳皮質の味覚野cortical taste area(一次味覚野primary taste area)は中心溝のやや前方部の弁蓋部と島皮質に存在する。ここでは,甘い,苦いなどの味の質の分析がなされる。弁蓋部と島皮質からは前頭眼窩野(二次味覚野secondary taste area)に投射する。そして,この部位は嗅覚,一般体性感覚,内臓感覚などの情報も同時に入力する味覚連合野taste association areaとなっていて,複雑な味覚を総合的に判断する場所である。チョコレートを一粒口にして甘いと感じるのは一次味覚野,「これは私の好物のミルクチョコレートで,まろやかで適度な苦味があっておいしい」と判断するのは二次味覚野の活動によるのである。
一次味覚野からは,情動発現と情動学習に関与する扁桃体へ情報が送られる。扁桃体は味覚性入力を情動行動に結びつける役割を果たす。すなわち,味覚路を経由してきた味覚情報に対して,それが体にとって都合のいいものか否かの評価を下し,行動発現を引き起こす脳部位にその判断結果を送り出している。味覚情報は,前頭連合野や扁桃体から報酬系に入り,おいしい,まずいの評価と情動行動が生じる。さらに視床下部に送られ,食行動に影響を及ぼす。おいしいときには脳内麻薬のβ-エンドルフィン,もっと欲しいときにはドーパミン,実際に食べるときには視床下部由来の摂食促進ペプチドなどの脳内物質が関与する。
【味覚異常taste disorder】 味覚は他の感覚と比べて老化現象が起こりにくい。味細胞が一定の周期でつねに新しい細胞に置き換わることがその理由の一つである。しかし,明らかに味覚に異常を訴える人がいるのも事実である。味覚異常には,味の感受性が低下している味覚減退症,味を感じない無味症,ある特定の味のみがわからない孤立性無味症,舌の左右いずれか一側で味を感じない片側性無味症,味の感受性が亢進している味覚過敏症,何も口にしなくても味を感じる自発性味覚異常症,塩味を苦味と感じるように本来の味の質を他の味と錯覚する錯味症などがある。味覚障害を主訴とする患者は,女性では40歳以上,男性では50歳以上に多く,70歳代がピークである。原因としては,薬剤の服用による副作用,血清亜鉛値の低下,舌炎・舌苔などの口腔粘膜疾患,味覚神経障害,高血圧症,胃疾患,肝障害,癌などの全身疾患によるものが多く,心因性,中枢神経性,放射線性のものが続く。 →神経系 →神経伝達 →脳内報酬系
〔山本 隆〕
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味覚
ミカク
sense of taste, qustatory sense
舌を中心とした口腔内での接触化学感覚(contact chemical sense)をいう.味には,甘味,塩味,酸味,苦味,うま味の5基本味がある.これらの味物質は,味蕾(みらい)にある味細胞先端の味毛(微絨毛)で受容されるが,受容のされ方は味物質により異なり,塩味や酸味は直接イオンチャネルを介し,甘味と苦味は受容体からGタンパク質,セカンドメッセンジャー,イオンチャネルといったカスケードをたどる.うま味は受容体を介すると考えられている.その後は,共通して脱分極性の受容体電位で細胞内カルシウム濃度が上昇し,シナプス間げきへ伝達物質(いまだ特定されていない)の放出が起こる.これで味神経のインパルスが発生し,これが大脳皮質味覚野に達し,味覚が得られる.なお,舌表面で,これらの味物質による味覚感度が異なるという味覚地図は誤りで,部位差はほとんどない.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
味覚【みかく】
化学感覚の一種。陸生動物では食物中に含まれる化学的成分が,魚類など水生動物では水に溶けた化学物質が味覚受容器を刺激し,味神経を通って味覚中枢に伝えられて生ずる。順応は速い。味覚受容器は昆虫では触角や口器に,カエルでは舌の乳頭にある。魚類以上では,主として味蕾(みらい)の中の味細胞である。基本的な味としては甘さ,すっぱさ,苦さ,塩辛さの4種が区別されるが,これらの混合の仕方,また嗅(きゅう)覚,温度感覚,触覚なども関係して種々の味覚が生ずると考えられている。甘さは舌尖(せん),苦さは舌根,すっぱさは側縁部,塩辛さは広く舌の全面あるいは舌尖において感じやすい。→味盲
→関連項目舌|味覚障害
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味覚
みかく
gustatory sense
水溶性の物質の刺激作用が,主として舌の表面に分布する味覚受容器 (味蕾) に与えられることにより生じる感覚。日常の味覚の体験は,嗅覚,視覚,温覚,圧覚,触覚などの感覚との混合から成るが,基本的な味 (味覚質) は,塩辛さ,すっぱさ,甘さ,苦さの4種とされる。 H.ヘニングはこれを四面体で表現し,中間の味は各面上の任意の点に定位しうるとした (味の四面体) 。一般に舌の先端は甘さ,先端から側面にかけての縁では塩辛さ,側面はすっぱさ,舌根部は苦さにそれぞれ敏感とされる。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
み‐かく【味覚】
〘名〙 味の感覚。唾液に溶ける固体や液体が刺激となって起こる化学的感覚で、舌の表面に分布する味蕾(みらい)という感覚器官で感知される。甘(あまい)、酸(すっぱい)、苦(にがい)、鹹(しおからい)の四つに区別される。味感。〔哲学字彙(1881)〕
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
デジタル大辞泉
「味覚」の意味・読み・例文・類語
み‐かく【味覚】
味を感じる感覚。唾液に溶けた化学物質が主に舌を刺激することによって起こり、甘さ・酸っぱさ・塩辛さ・苦さを感じ取る。「味覚をそそる」「味覚の秋」
[補説]近年、甘味、酸味、塩味、苦味と並んで「うまみ」が五つめの味とされる。
[類語]視覚・聴覚・嗅覚・触覚
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味覚
味覚受容器によって感ずる感覚.甘味,酸味,苦味,かん(鹹)味,うま味を基本味とする.舌の味蕾が信号を受容し,その信号は神経系を刺激して脳へ伝えられる.
出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報
みかく【味覚 taste sensation】
味を感じる感覚をいう。化学感覚の一種。空気を呼吸する動物では,味覚は口腔内へ摂取した食物や水の性質を判断する感覚であり,一方遠隔性の化学受容は嗅覚(きゆうかく)で行われる。水を呼吸する動物では,両者はともに水に溶存する物質の受容器であり,魚類では,アミノ酸に対して味覚も嗅覚もともに鋭敏であることが知られている。したがって魚類は味覚も遠隔性の感覚として働いていると思われる。ただし,味覚と嗅覚を伝える神経と刺激閾値(いきち)には大きな差がある。
出典 株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について 情報
世界大百科事典内の味覚の言及
【味】より
…飲食物などが舌の味覚神経に与える感じ。その知覚についてのメカニズムは〈味覚〉の項目を参照されたい。…
【化学感覚】より
…嗅覚や味覚のように物質の化学作用が刺激となって生じる感覚で,一般に脊椎動物では味覚と嗅覚がこれに含まれる。陸生の動物のうち,無脊椎動物には脊椎動物の味覚器や嗅覚器に直接対応する感覚器がないが,これらの動物でも,刺激源から刺激物質の分子が空中を伝播(でんぱ)してきて動物に応答を起こさせる遠隔化学感覚を嗅覚,刺激物が直接動物に接触したときに動物に応答を起こさせる接触化学感覚のうち摂食に関係するものを味覚と定義できる。…
【果物】より
… 一方,オランダを中心にした16~17世紀の静物画は花と果物を好んで取り上げ,多くの寓意を生みだした。まず五感の寓意として,果物は魚とともに味覚を表すものとされ,四季の象徴としては夏と秋,また四大のうちでは地の表現に用いられた。大きく描かれた果物,とくにレモンやオレンジは聖母マリアを表すともいわれ,また永遠性を暗示する題材としての果物は,死の永遠性を表す貝に対し,生の永遠性を表現したといわれる。…
【舌】より
…ついで舌下筋の収縮により舌は餌とともに口腔内にひきこまれるが,これら一連の動作は0.15秒ほどの短時間内に行われる。爬虫類以上では舌は触覚・味覚・発音器官としての働きももつ。【松井 正文】
[ヒトの舌]
口腔の底部後方より突出している大きな高まりで,その表面は粘膜で覆われ,内部は,多くの脂肪細胞を含んだ結合組織により多くの小さな筋肉の束に分かれている。…
※「味覚」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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