出来高払い制(読み)できだかばらいせい

百科事典マイペディア 「出来高払い制」の意味・わかりやすい解説

出来高払い制【できだかばらいせい】

一般的には,出来あがった成果物の数量や仕事量に応じて報酬額を支払う制度。ここでは,医療分野の出来高払い制について説明する。出来高払い制は,社会保険医療機関に支払われる診療報酬の計算方法の基本的な考え方である。医師の技術や診療効果など医療の質には関係なく,行った医療行為の回数や量によって,病院や医師の請求に応じて医療費を支払うもの。これに対し,病気をある基準で分類し,それぞれに定額を定め,それに基づいて医療費を支払うシステムを〈定額払い制〉(包括払い。通称〈まるめ〉)または〈定額制〉という。 出来高払い制は,過剰検査や過剰投薬を招きやすく,今日の医療費増大の最大の原因と指摘されている。そのため,厚生省は1990年に糖尿病などの比較的症状が安定している慢性期の70歳以上の高齢者の入院医療について,診療内容や薬剤投薬の多少に関係なく一定の医療費とする定額払い制を導入した。その後,小児科外来などにも適用。1996年4月には〈老人慢性疾患外来総合診療科〉を新設し,糖尿病や高血圧性疾患,脳血管性疾患など19種類の慢性疾患をもつ高齢者の外来についてもこれを適用した。しかし,出来高払いを選ぶか定額払いを選ぶかは各医療機関の判断に任されているため,実際に定額制を採用した医療機関は10%にみたなかった。 1997年秋からは,老人医療に限らず入院費の定額化を検討するため,国立病院など10の医療機関で,入院医療費の定額払い制を試行した。これは,定額払い制の結果,必要な検査や薬までも控えるような診療が行われるのではないかなどの,医療の質の低下を懸念する声が上がっているためである。 1997年11月に厚生省の諮問機関の医療保険福祉審議会が提示した〈診療報酬体系改革案〉では,2000年を実施目標として,(1)癌(がん)や肺炎など容体が変わりやすい急性期の診療については原則出来高払い,(2)糖尿病など容体が安定している慢性期の診療は原則定額払い,(3)入院費は胃炎などの急性病であっても,容体が安定した後は1日定額払い,(4)虫垂炎など検査や手術などの診療内容がほぼ一定となっている場合は,すべての医療費を一定にする疾病別定額払い,の原則を導入。医師の技術や経験に応じた診療報酬体系の創設なども提案している。→診療報酬点数

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