公安調査官室(読み)こうあんちょうさかんしつ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「公安調査官室」の意味・わかりやすい解説

公安調査官室
こうあんちょうさかんしつ

公安調査庁の地方拠点の一つ。公安調査庁設置法第16条(駐在勤務)に基づき、公安調査官が常駐し、国家に危害を及ぼすおそれのある人物・団体などの情報収集にあたる。正式名称は「公安調査駐在官室」。国際テロ組織、カルト集団、左翼組織、右翼組織などのほか、北朝鮮など、わが国と緊張関係にある国に関する情報収集や諜報(ちょうほう)活動、立ち入り検査を行う。調査の結果、規制が必要と判断した場合には、破壊活動防止法や無差別大量殺人団体規制法(「無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律」、平成11年法律第147号)などに基づき、取締りや団体解散(処分)請求などにあたる拠点となる。

 法務省外局である公安調査庁の拠点には、本庁(公安調査庁)、全国8地域ブロック(北海道、東北、関東、中部近畿、中国、四国、九州)にある公安調査局、横浜市、京都市、那覇市など全国14か所の公安調査事務所のほか、必要であると認められた場所に公安調査庁が設けた十数か所の公安調査官室(駐在官室)がある。2013年(平成25)時点で、北海道稚内(わっかない)市、同根室(ねむろ)市、福島市、福井市、東京都国立(くにたち)市、神奈川県相模原(さがみはら)市、山口県下関(しものせき)市、高知県四万十(しまんと)市、福岡県北九州市などに公安調査官室が設けられている。公安調査庁は2014年度予算の概算要求で、沖縄県石垣島にも公安調査官室を設けるため約2億円を計上している。石垣島に公安調査官室を設けるのは、尖閣(せんかく)諸島領有権をめぐって頻発する中国公船の領海侵入や日本人の無許可上陸などに関する情報収集の拠点とするねらいがある。尖閣諸島周辺の情報収集は従来、那覇公安調査事務所が担当していたが、沖縄本島と石垣島は約410キロメートル離れているため、移動時間や天候などに左右されずに、24時間態勢で情報収集できる石垣島に公安調査官室の設置が必要であるとの判断である。

[編集部]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例