今し・乃し(読み)いまし

精選版 日本国語大辞典 「今し・乃し」の意味・読み・例文・類語

いま‐し【今し・乃し】

連語〙 (「し」は強めを表わす副助詞)
① 今という今。たった今。ちょうど今。
万葉(8C後)二〇・四三〇五「木の暗(くれ)の繁き尾の上(へ)をほととぎす鳴きて越ゆなり伊麻之(イマシ)来らしも」
② 今となって。今になって。
※万葉(8C後)一四・三五七七「愛(かな)し妹をいづち行かめと山菅(やますげ)背向(そがひ)に寝しく伊麻之(イマシ)悔しも」
③ 更にもう。もっと。
※万葉(8C後)一〇・二〇五七「月かさね吾が思ふ妹に逢へる夜は今之(いまシ)七夜を継ぎこせぬかも」
[語誌](1)漢文訓読の文章に顕著に見られる。多く「方」「乃」「仍」を訓むもので、助詞「に」を付して、「イマシニ」としたらしい例もある。
(2)助詞「し」の自由な用法の衰え始める中古以降の「いまし」は、副詞とみることもできる。「いましは」「いましも(あれ)」の形で用いられることもある。

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