井上勤(いのうえつとむ)(読み)いのうえつとむ

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

井上勤(いのうえつとむ)
いのうえつとむ
(1850―1928)

翻訳家。徳島に生まれる。オランダ人ドンケル・クルチウスに英語を学び、神戸で通訳となり、ドイツ領事館に勤めたのち、1881年(明治14)大蔵省関税局翻訳掛(ほんやくがかり)、83年文部省に移り、宮内省元老院など官界を歩く。その間ジュール・ベルヌ『九十七時二十分間月世界旅行』(1880)、『亜非利加内地三十五日間空中旅行』(1883)、『白露革命外伝自由の征矢(そや)』『六万英里海底旅行』(1884)、『通俗八十日間世界一周』(1888)、シェークスピア『人肉質入裁判』(1883)など英書から翻訳し、明治初期の西洋文学紹介に大きく貢献した。のち実業家となるが成功せず、神戸で死去

富田 仁]

『柳田泉著『明治初期翻訳文学の研究』(1959・春秋社)』

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