乞食(こつじき)(読み)こつじき

日本大百科全書(ニッポニカ) 「乞食(こつじき)」の意味・わかりやすい解説

乞食(こつじき)
こつじき

比丘(びく)が食を求めて行くことをいう。出家の比丘は、修行(しゅぎょう)に専念するため、自己の肉体を維持する手段として自己の労働によって自活するのを邪命(じゃみょう)として許されず、食を他人に乞(こ)うのが十二頭陀行(ずだぎょう)の一とされている。早朝に村邑(そんゆう)の家々の門口にて食物を鉢に受けるのが、古来からの規矩(きく)である。このようにして鉢の中に受けた食物をピンダパータpiapātaといい、漢語では分衛(ぶんえ)、あるいは鉢に受ける食物の形状が団子状をしているので団堕(だんだ)という。比丘の乞食姿は、今日の日本ではほとんどみかけなくなったが、上座仏教の伝えられた南アジアの諸国では、いまでも行われており、早朝の風物詩となっている。しかしスリランカではあまりみることがなく、むしろ檀家(だんか)のほうが寺に食物を運んでいる。比丘の乞食は、自給自足の生活を送るカトリック修道僧とは著しい対照をなしている。

高橋 壯]

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