下請労働者(読み)したうけろうどうしゃ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「下請労働者」の意味・わかりやすい解説

下請労働者
したうけろうどうしゃ

大企業の下請制度のもとに組み込まれている中小零細企業に就労する労働者をいう。下請労働者は、(1)電機・自動車など機械工業のように発注元である親企業の外部で部品製造や製品加工を行う下請企業の労働者、(2)鉄鋼業造船業石油化学工業、電力業などで親企業の構内で作業工程の一部を担当する下請企業の労働者(社外工)、(3)建設業の多重下請に組み込まれた下請業者の労働者などに大別することができる。1970年代以降の低成長経済のもとで、コスト削減を目ざして下請企業を活用する業種が広がり、下請労働者の就労分野は工場の製造工程だけでなく多方面にわたっている。たとえば、放送番組の制作や出版業界、病院の医療事務などでも、その工程の一部または全部を下請業者に発注するようになった。1990年代に入ると、業務請負アウトソーシング)という呼び方で、これまで自社内で行われていた業務を外注化する動きがさらに強まっている。このため、下請労働者はいっそう増加する傾向がある。

 下請労働者の労働条件は、親企業の正社員と比べ一段と低位である。構内作業のうち危険有害業務を下請労働者に担当させることが多く、労働災害の被災率も高い。下請労働者は、形式上は下請企業と雇用契約を結んでいるが、現実の労働内容、賃金・労働条件などは親企業の操業状況や下請単価の水準などによって規定されている面が大きい。そこで、下請企業による賃金不払いなどをめぐって下請労働者に対する使用者責任の及ぶ範囲を、下請企業だけでなく親企業にまで拡大してとらえる労働法の理論判決が出されている。

[伍賀一道]

『中央大学経済研究所編『中小企業の階層構造』(1976・中央大学出版部)』『石田和夫編『現代日本の鉄鋼企業労働』(1981・ミネルヴァ書房)』『木村保茂著『現代日本の建設労働問題』(1997・学文社)』

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