ローラー(Heinrich Rohrer)(読み)ろーらー(英語表記)Heinrich Rohrer

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

ローラー(Heinrich Rohrer)
ろーらー
Heinrich Rohrer
(1933―2013)

スイス物理学者東部にある町ブックスに生まれる。スイス連邦工科大学で数学と物理学を学び、1960年に博士号を取得したのち、1年間兵役についた。その後、渡米してニュー・ジャージー州にあるラトガーズ大学研究員となり、1963年スイスに戻り、IBMチューリヒ研究所に所属した。1986年同研究所のフェロー(特別研究員)となった。1974年から1975年にかけてカリフォルニア大学の客員研究者となったが、そのとき以外は同研究所で研究生活をおくった。

 IBM研究所で固体物理学、とくに金属表面の原子のふるまいについて研究した。1978年にはビーニッヒが彼の研究チームに加わり、二人は共同でトンネル効果とよばれる量子的メカニズムを利用した新しい研究法を開発した。その後、この研究から走査型トンネル顕微鏡のアイデアが生まれ、その開発に成功した。走査型トンネル顕微鏡は、鋭い針先からトンネル電流を試料に向けて放出し、その電流を一定にすることにより、電圧の変化の測定から、試料表面の微細な原子レベルの立体像をつくるものである。この顕微鏡は、半導体の表面構造の解析マイクロエレクトロニクス、さらにDNAデオキシリボ核酸)やウイルスの研究など幅広く利用されている。共同研究者のビーニッヒとともに、「走査型トンネル顕微鏡の設計」により1986年のノーベル物理学賞を受賞した。なお、電子顕微鏡の基本技術を開発したルスカ同時受賞している。

[編集部]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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