リン(燐)酸ナトリウム(読み)りんさんナトリウム(英語表記)sodium phosphate

改訂新版 世界大百科事典 「リン(燐)酸ナトリウム」の意味・わかりやすい解説

リン(燐)酸ナトリウム (りんさんナトリウム)
sodium phosphate

化学式Na3PO4。リン酸三ナトリウム,第三リン酸ナトリウムソーダ)ともいう。無水和物,1,6,7,10,12水和物が知られている。無水和物は無色立方晶系結晶。融点1340℃。比重2.537(17.5℃)。水100gに対する溶解度4.5g(0℃),77g(100℃)。水溶液は強アルカリ性。12水和物Na3PO4・12H2Oは無色三方晶系結晶。比重1.62。熱すると100℃で1水和物となる。水100gに対する溶解度28.3g(15℃)。エチルアルコールに不溶。リン酸水素二ナトリウムに水酸化ナトリウムの当量を加え,蒸発乾固したものを加熱脱水して無水和物が得られる。水溶液から結晶させると室温では12水和物,55~65℃で10水和物,65~121℃で6水和物が得られる。清缶剤,皮なめし剤,綿・羊毛などの洗剤,金属清浄剤,工業用水処理,ベーキングパウダーなどに用いられる。

 水素塩Na2HPO4,NaH2PO4を単にリン酸ナトリウムということもある。

第二リン酸ナトリウムともいう。化学式Na2HPO4。無水和物,2,7,8,12水和物が知られている。無水和物は無色結晶。240℃で分解してピロリン酸塩Na4P2O7となる。水100gに対する溶解度1.63g(0℃),12.14g(25℃)。エチルアルコールに不溶。7水和物は無色単斜晶系結晶。比重1.679。35.4~48.35℃で安定。12水和物は無色斜方晶系結晶。融点34.6℃。比重1.52(17℃)。風解性があり,放置すると7水和物となる。110℃では2水和物,180℃で無水和物となる。リン酸に計算量の水酸化ナトリウムあるいは炭酸ナトリウムを加え,濃縮して結晶化させる。0~35℃で12水和物,35~48℃で7水和物,48~95℃で2水和物,95℃以上で無水和物が得られる。染色助剤,清缶剤,ホウロウ釉(うわぐすり),皮なめし,工業用水処理,食品加工に用いられる。

化学式NaH2PO4。第一リン酸ナトリウムともいう。無水和物,1,2水和物が知られている。無水和物は六方晶系結晶。カリウム塩とは結晶系も違い,強誘電体でもない。250℃でメタリン酸塩NaPO3となる。水に易溶。水溶液は微酸性。1水和物は無色斜方晶系結晶。比重2.040。100℃で無水和物となる。水に可溶,エチルアルコールに不溶。2水和物は無色斜方晶系結晶。比重1.91。融点60℃。水100gに対する溶解度91.1g(0℃),308g(40℃)。計算量のリン酸と水酸化ナトリウム,またはリン酸二水素ナトリウムとリン酸とを反応させ,pH4.4~4.6に調節した溶液から,41℃以下で2水和物,41~58℃で1水和物,58℃以上で無水和物が得られる。酸性の洗浄剤,ベーキングパウダー,染色助剤,清缶剤,醸造用剤,食品加工などに用いられる。
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