ラ・サル(読み)らさる(英語表記)Antoine de La Sale

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ラ・サル」の意味・わかりやすい解説

ラ・サル
らさる
Antoine de La Sale
(1385ころ―1460)

フランス中世末期の物語作者。父はガスコーニュ出身の傭兵(ようへい)隊長。アルル近くに生まれ、14、5歳ころから小姓としてアンジュー伯家に仕える。生涯の大半をこの宮廷で過ごし、1448年リュクサンブール公の宮廷の傅育(ふいく)官となる。多年近習(きんじゅ)生活の経験をもとに王族の子弟教育の書『かぶと』(1442)、『広間』(1451)を著したが、彼の文名を不朽のものとしたのは散文物語『プチ・ジャン・ド・サントレ』L'Histoire du Petit Jehan de Saintré(1456)である。騎士道恋愛に新しい解釈を与えたこの作品は、騎士道物語の体裁を保ちつつも、円卓物語の伝統には決別を告げ、写実的手法により近代的散文文学を準備した。

[目黒士門]

『大高順雄著『アントワーヌ=ド・ラ・サル研究』(1970・風間書房)』

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