ランダム・ウォーク(読み)らんだむうぉーく(英語表記)random walk

翻訳|random walk

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ランダム・ウォーク」の意味・わかりやすい解説

ランダム・ウォーク
らんだむうぉーく
random walk

無規則に動く粒子運動のモデルで、乱歩彷徨運動(ほうこううんどう)などとよばれることもある。例として、賭(か)けの問題での所持金の変動状況を表すもの、拡散粒子の運動の近似としての離散的記述などがよく知られている。これらのほかにも多種多様なモデルがあり、この考えは非常に広い応用範囲をもっている。ここでは、もっとも簡単な形の、以下のような例をあげる。

 数直線上の整数の点だけを動く粒子を考え、初めにある点に位置する粒子が単位時間後に確率1/2で隣接する点(これは2個ある)へ移るものとする。この場合、粒子がいつかは初めの位置へ戻る確率は1であることが示される。

 次に、同じ形の問題を二次元で考える。すなわち、平面上に座標を定め、二つの座標が整数であるような点だけを動く粒子を考え、初めにある点に位置する粒子が、単位時間後に確率1/4で隣接する点(これは4個ある)へ移るものとする。この場合、粒子がいつかは初めの位置へ戻る確率は一次元の場合と同じで1であることが示される。

 次に同じ形の問題を三次元で考える。すなわち、空間座標系を定め、三つの座標が整数であるような点だけを動く粒子を考え、初めにある点に位置する粒子は単位時間後に確率1/6で隣接する点(これは6個ある)へ移るものとする。この場合、粒子がいつかは初めの位置へ戻る確率は、一次元、二次元の場合と異なり、約0.35であることが示される。

 以上の例では、どの隣接点へ移る確率も同じと考えたが、一般的には、各点pに対してその隣接点に移る確率(各隣接点ごとに異なってもよい)と点pにとどまる確率が与えられていて、しかもこれらの確率の値は点pによって異なってもよい、とするのである。このような一般の場合には一次元の場合でも「粒子がいつかはもとの位置に戻る確率は1」という性質は一般には成り立たない。

古屋 茂]

『W・フェラー著、国沢清典監訳『確率論とその応用』(1970・紀伊國屋書店)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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