ランゴバルド法(読み)ランゴバルドほう

改訂新版 世界大百科事典 「ランゴバルド法」の意味・わかりやすい解説

ランゴバルド法 (ランゴバルドほう)

ゲルマン部族法の一つで,ランゴバルド人の法。643年成立したロターリ王法典Edictum Rothariは,国王イニシアティブにより人民との共同作業という形式で行われたランゴバルド人の法記録であるが,その立法技術において他の諸部族法典に抜きんでたものである。サリカ法典とともに古来の慣習法を多く保持するものとして知られるが,個々の表現や規定,それにとりわけ法記録の全体的構造においてローマ法の知識,影響を否定できず,また西ゴートや南ドイツの諸部族法典の影響もみてとれる。後世,リウトプランド王(在位712-744)などによって新勅令が追加された。ところでランゴバルド法は学問的研究の加えられた唯一の部族法である。9,10世紀以来パビアの法学校でランゴバルド諸国王の法律に関する学問的取扱いがみられたが,11世紀以降にはカロリング朝およびザクセン朝下のイタリア勅令(カピトゥラリア)の解説も行われ,両者を結び合わせた包括的な法令集,いわゆる《パビア書Liber Papiensis》が11世紀前半に生み出された。パビアの法律家はローマ法大全の概略的知識を有し,《パビア書の解説Expositio ad librum papiensem》(1050か70ころ)において,ローマ法はすべての人々の一般法lex omnium generalisとしての地位を認められている。11世紀後半にはパビア書の法素材を系統的にまとめ上げた《ロンバルダLombarda》という法書の成立をみた。パビア学派がボローニャ注釈学派にどの程度の影響を及ぼしたのかは今までのところ未解決の問題であるが,両学派の間の時間的な直接性と研究方法の類似性(とくに注釈という説明形式)は注目される。また注釈学派は授業の中で,《ロンバルダ》を基礎にしてランゴバルド法を取り扱っている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ランゴバルド法」の意味・わかりやすい解説

ランゴバルド法
ランゴバルドほう

ゲルマン民族であるランゴバルド族の部族法。ゲルマン部族法典のなかで学問的研究の加えられた唯一の法。たとえば,ロタリ王法典 Edictum Rothariiのように,内容においても構成においても,他のゲルマン部族法典のいずれよりも完備したものとなった。ランゴバルド法は,その支配した領土性質上ローマ法の強い影響を受けながらも,最後まで固有の法慣習を保ち,ローマ法に同化されることはなかった。 774年,フランク王国がランゴバルドを征服したのちでも,ランゴバルド法は生残り,11世紀にいたると,裁判所でのランゴバルド法の解釈は急速な発展を示し,体系的,理論的研究の性質を帯びるようになった。パビアの法学校のように,ランゴバルド法やフランク=ランゴバルド法を解説する学校も生れた。

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