ヤペテ人(読み)やぺてじん(英語表記)Japhetic

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヤペテ人」の意味・わかりやすい解説

ヤペテ人
やぺてじん
Japhetic

古代オリエント史に活躍した諸民族の一つ。セム・ハム系、インド・ヨーロッパ系いずれにも属さない「帰属不明の諸族」をさす。20世紀初頭以来の諸研究によって、彼らが一つのいわゆる人種をなすものと考えられ、『創世記』10章の記述に従って命名された。先史時代に全オリエントに繁栄した彩色土器文化はその所産で、彼らはカフカスアルメニアを原住地とし、言語学的にはカフカス語類似の膠着(こうちゃく)語に属し、人類学的にはアルメノイド的特徴をもつ人種群で、オリエント人種形成の基盤をなし、ほとんどすべての民族に混血していると考えられている。歴史的には、シュメール人、エラム人、フルリ人ヒッタイトミタンニ、カッシュ諸帝国の民はこれに属し、クレタ人、エトルリア人、現在のアルメニア諸族、バスク人、さらにインダス文明人も同系とされているが、いずれも系統不明である。ヤペテ人の名称は近年あまり使われない。

[高橋正男]

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旺文社世界史事典 三訂版 「ヤペテ人」の解説

ヤペテ人
ヤペテじん
Japhetic

古代オリエントの1民族群の呼称
カスピ海岸を原住地とする古代カフカース語系の民族とみられ,シュメール人・フルリ人・小アジア原住民(ヒッタイト)などがこれに属するという説があるが,確認されていない。ヤペテはノアの子のひとりの名称で,これを借りてセム系,インド−ヨーロッパ系に属さぬ第3の民族を表そうとしたもの。

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