ヤナコナ(英語表記)yanacona

改訂新版 世界大百科事典 「ヤナコナ」の意味・わかりやすい解説

ヤナコナ
yanacona

ペルーにおける小作農のこと。語源ケチュア語で従僕,元来はインカ時代に共同体から切り離され,皇帝・貴族の用役に従事する隷属民を意味した。広義にはアシエンダにおける借地に対し,労働あるいは生産物地代を払う小作農一般を指すが,近代史においては,とくに19世紀後半~20世紀前半,ペルー沿岸部の綿花および米作アシエンダにおいて一般化した小作農(分益農)を指す。ヤナコナは地主から生産手段(土地,農具種子肥料役畜など)を貸与され,その代償として収穫物を一定比率で地主に納める。この場合,借地の10分の9以上を地主が指定した作目(綿花,米)にあてなければならない。この制度は商品農業の進展に対応した過渡的な形態であり,1940年代に入って機械化が進み,地主が直接経営に乗り出すにしたがい,賃労働に置き換えられていった。1947年にはその耕作権を擁護するヤナコナ法が発令され,そして64年の農地改革法によって自作農化が図られた。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のヤナコナの言及

【アシエンダ】より

… アシエンダの経営は小作地と地主直営地に大別される。前者はさらに地代形態により雇役小作(小作農の名称――コロノ,インキリノ,ワシプンゲーロ),分益小作(ヤナコナ,アパルセロ,メディエロ),賃小作(アレンダタリオ)に区別され,直営地においては農業労働者(ガニャン,ペオン,アフエリノ,ボルンタリオ)が低賃金労働を行う。アシエンダの構成員は,19世紀中葉のメキシコの例でみると,地主の代理である支配人,司祭,管理人,正書記,経理士などのエリート層,人夫頭,書記,教師,番人などの中間職,ペオン,下働き人夫などの農場労働者である。…

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