日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
マートン(Robert C. Merton)
まーとん
Robert Cox Merton
(1944― )
アメリカの金融学者。ニューヨークに生まれる。1966年にコロンビア大学で数理工学の学士号、1967年にカリフォルニア工科大学で応用数学の修士号を取得し、1970年にマサチューセッツ工科大学(MIT)で経済学の博士号を取得。P・A・サミュエルソンの助手としてMITで経済学を教え、MIT教授ののちハーバード大学教授となる。1997年に、「株式オプションの価値を示す画期的な公式を発見するとともに、デリバティブ(金融派生商品)の価格形成理論の構築に貢献」したとして、M・S・ショールズとともにノーベル経済学賞を受賞した。
ショールズとフィッシャー・ブラックFischer Black(1938―95)によって1973年に発表された株式オプションの価格決定式である「ブラック‐ショールズ方程式」は、数理ファイナンス、金融工学隆盛の道をひらいた。マートンはブラック‐ショールズ・モデルにおけるオプション価格の計算式を数学的に検証した。なお、マートンとショールズは、1993年に設立された大手ヘッジファンド、ロングターム・キャピタル・マネジメント(LTCM)の共同経営者として名を連ねていたが、ノーベル賞受賞の翌1998年にLTCMが破綻(はたん)し、ノーベル経済学賞のあり方も含め議論をよんだ。
[金子邦彦]