マカッサル(民族)(読み)まかっさる(英語表記)Makassar

日本大百科全書(ニッポニカ) 「マカッサル(民族)」の意味・わかりやすい解説

マカッサル(民族)
まかっさる
Makassar

インドネシアスラウェシ島の南西半島(南スラウェシ州)南部に居住する民族集団。人口は約200万人。文化的に共通点の多いブギス人とともにブギス・マカッサル人としばしば総称されるが、言語系統論上は、マカッサル語は他の南スラウェシ諸語(ブギス語、サダン・トラジャ語、マンダール語)からもっとも孤立した位置にある。親族組織は双系的であるが、イトコ婚による親族紐帯(ちゅうたい)の強化、妻方居住的傾向も顕著である。王国時代の身分制に基づいた王族・貴族/平民の身分意識も根強いゴワ王国の形成は14世紀前後にさかのぼり、他のブギス諸王国と同様、天孫降臨の建国神話をもつ。17世紀初頭にはイスラム改宗、香料貿易の国際的中継基地として最盛期を迎えるが、1669年オランダ東インド会社とボネ王国の同盟軍に敗北。以後、貿易の権益はオランダ側に、南スラウェシにおける覇権はブギス人のボネ王国に移った。住民のほとんどはムスリムであるが、精霊信仰、バワカラエン山信仰などの影響も強い。おもな生業水稲、雑穀栽培など、また漁業も盛んでとくにマカッサル海峡におけるトビウオ漁、かつてバジャウ人とともにオーストラリア北岸まで出漁したナマコ漁は有名である。

伊藤 眞]

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