知恵蔵 「ホンダジェット」の解説
ホンダジェット
本田技研工業は、航空機事業への参入を創業以来の夢としていた。創業者である本田宗一郎(故人)は、小学生時代に自動車や複葉機を見た強い印象から自動車修理業に就き、後に部品製造会社を興して太平洋戦争当時は航空機の部品製造などを行っていた。敗戦後は二輪車生産から再出発し、自動車製造着手前の1962年には「誰にでも乗れる軽飛行機を開発したい」と語っている。86年には、航空機の基礎研究を開始し様々な苦節を経て、93年には同社初の実験用小型ジェット機MH02の初飛行が行われた。2003年には独自開発のジェットエンジンを開発、これをゼネラル・エレクトリック社(GE)と共同で改良を加えたのが低燃費・低エミッション(排ガス)を誇るHF120エンジンである。一般にこのクラスのジェット機は胴体後部にエンジンを置くが、同機は主翼上面に2基のエンジンを配し高速域での空力特性を向上させ、胴体からエンジン支持構造を廃止してキャビンを拡大することを実現した。また、主翼や胴体先端部の形状に自然層流設計を取り入れて、空気抵抗を減らし燃費向上を図っている。胴体はカーボン複合材一体成形構造を採用するなどにより、小型軽量化と大きな胴体内体積とを両立させている。10年12月には量産型初号機の初飛行に成功し、11年前半には米ノースカロライナ州に生産工場が完成の予定。北米及び欧州での販売価格は390万米ドル。同クラスでは最高価格帯に属するが、燃費や騒音、排ガスなどの性能に優れていることが評価につながり、受注開始日に年間生産予定数70機を上回る約100機を受注するなど、予約状況は好調という。
(金谷俊秀 ライター / 2011年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報