化学辞典 第2版 「ペルオキソ酸(塩)」の解説
ペルオキソ酸(塩)
ペルオキソサンエン
peroxoacid(peroxoacid salt)
オキソ酸の (-OH)1-,(=O)2- の一部,または全部を,それぞれ (-OOH)1-,(-OO-)2- で置換した形式の酸(塩)をいう.したがって,オキソ酸の中心原子の酸化数は,置換以前とかわらないから,過――酸ではない.また,結晶水と同様に,H2O2が塩の結晶中に含まれる場合がある.この場合,必ずしも中心原子にOで結合しているとは限らず,たとえばH原子でオキソ酸のO原子に水素結合している場合もある.結晶構造の解明が進むとともに,両者の区別もしだいに明確になりつつあるが,この種の化合物には不安定なものも多く,構造が明確でないものもあり,実用上は両者の性質が類似していることから,これらのH2O2付加物もペルオキソ酸(塩)とよばれる場合がある.いずれも強い酸化性があり,多くが酸化剤,漂白剤などに実用されている.多くのペルオキソ酸(塩)が知られているが,たとえば,ペルオキソ二硫酸(塩),ペルオキソリン酸(塩)などは代表例である.有機化合物で,カルボン酸R-C(=O)OHのカルボキシル基を-C(=O)OOHにかえたものは,ペルオキシ酸という.たとえば,C2H5C(=O)OOHはペルオキシプロピオン酸である.学術用語では過酸という.有機ペルオキソ酸は有機反応における有用な酸化剤であり,遊離基発生源である.重合反応の開始剤などとして用いられる.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報