ベンチュウ(英語表記)whipworm
Trichuris trichiura

改訂新版 世界大百科事典 「ベンチュウ」の意味・わかりやすい解説

ベンチュウ (鞭虫)
whipworm
Trichuris trichiura

線形動物双器綱毛頭虫上科Trichuroideaに属する人体寄生虫。成虫は体の前方約3/5が細くなっており,あたかも鞭(むち)のような形をしているので,この名がある。雄虫は体長3~4cm,雌虫は4~5cm。細い部分には特殊な構造を有する食道があり,スティコソームと呼ばれる大きな球形の細胞が数珠状に連なった中を縦に貫通している。寄生部位は盲腸で,細い体前部を粘膜内に埋没させて吸血し,多数寄生の場合には貧血の原因になる。ときに虫垂にも寄生する。虫卵は両端に栓を有する岐阜提灯様の形をしており,大きさは50μm×22μmである。糞便とともに外界に出た卵は発育して幼虫包蔵卵となり,それをヒトが経口摂取して感染する。カイチュウコウチュウ鉤虫)と同じ土壌媒介線虫であるが,これらが著しく減少した日本でも,農村地帯などで依然として高い感染率がみられる。駆虫には,メベンダゾールやオキサンテルなどが用いられる。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のベンチュウの言及

【寄生虫】より

…なお,これらの家畜のほか実験動物にも多数の寄生虫が存在している。【小島 荘明】【本好 茂一】
[寄生虫病の歴史]
 中国の寄生虫病についての歴史は非常に長く,湖南省長沙の馬王堆1号漢墓の女性の死体からジュウケツキュウチュウ(住血吸虫)卵が,湖北省江陵の鳳凰山168号墓の男性死体からジュウケツキュウチュウ,ベンチュウ(鞭虫),ジョウチュウ(条虫)の卵が検出され,前2世紀ごろの中国では寄生虫に広く汚染されていたと推定されている。文献上でも《史記》の倉公伝など,古くから寄生虫についての記載があるが,寄生虫病についても詳しく記載している《諸病源候論》によると,7世紀初頭には伏虫,蚘虫,白虫,肉虫,肺虫,胃虫,弱虫,赤虫,蟯虫の9種の寄生虫が知られていた。…

※「ベンチュウ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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