ベルリン・オリンピック競技大会(読み)ベルリン・オリンピックきょうぎたいかい

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 の解説

ベルリン・オリンピック競技大会
ベルリン・オリンピックきょうぎたいかい

ドイツのベルリンを開催都市として行なわれた第11回オリンピック競技大会。1936年8月1日から 16日まで開催され,49ヵ国から集まった 4000人あまりの選手が参加した。この大会は 1933年にドイツでアドルフ・ヒトラーナチスが政権を掌握してまもなくの開催となり,その反ユダヤ思想や人種差別主義のもとでの開催には多くの異議が唱えられ,世界中で参加ボイコットの運動も繰り広げられた。国際オリンピック委員会 IOCはドイツ政府に対し,ユダヤ人選手も代表に加えること,ナチスのイデオロギー宣揚のために大会を利用しないことなどを約束させ,各国のボイコットを防ぎ開催にこぎつけた。古代オリンピック発祥の地,ギリシアオリュンピアで採火した「オリンピックの火」をたいまつのリレーでメインスタジアムに運ぶ聖火リレーがこの大会で初めて行なわれた。かぎられた範囲でのみ見られる有線放送ではあったが初めて競技がテレビ中継された大会でもあった。映画監督レニ・リーフェンシュタールによる大会の記録映画『民族の祭典』(1938),『美の祭典』(1938)は不朽の名作と賞賛を浴びた。金メダル争いは,ドイツが 33個を獲得し首位に立ち,アメリカ合衆国 24個,ハンガリー 10個,イタリア 8個と続いた。大会の花形選手はアメリカのジェシー・オーウェンズで,陸上競技の 4種目にわたって世界新記録で金メダルを獲得した。今大会からバスケットボールカヌーオリンピック種目に採用された。日本選手では陸上競技三段跳びで田島直人が優勝し,この種目で日本は 3大会連続の優勝となった。マラソンでは当時日本の植民地だった朝鮮から出場したソン・ギジョン孫基禎)が優勝した。棒高跳びでは西田修平が銀メダル,大江季雄銅メダルを獲得した。水泳では,1500m自由形の寺田登,200m平泳ぎの葉室鉄夫,男子 800mリレーチームが優勝した。女子 200m平泳ぎの前畑秀子は日本女子競泳初の金メダルに輝いた。

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