カヌー
かぬー
canoe
舵(かじ)や竜骨などを用いない原始的な構造の小舟で、種々の形態のものが世界中に広く分布している。アフリカ、中南米、アジア、オセアニアを通じてもっとも広くみられるのが、木の幹をくりぬいた丸木舟(独木舟)(まるきぶね)タイプのものである。南太平洋の諸民族の間で独自の発展を遂げ、通常の独木舟やそれに波よけの外板をつけたもののほかに、独木舟の片側または両側に丸太のフロートをつけ安定性を向上させたアウト・リガー式のカヌー、二つの舟を梁(はり)でつないだり、甲板を渡して帆柱を立てたりしたダブル・カヌーなどがある。ニュージーランドのマオリやその他の島嶼(とうしょ)民の間では、長さ18メートルにも及ぶ戦闘用のカヌーもみられる。これらのカヌーには、しばしば優美な彫刻が施されていた。
北米先住民やエスキモーおよびイヌイットの間では、異なった構造のカヌーが高度な発展を遂げた。カヤックとよばれるカヌーは、軽い木または獣骨のフレーム全体にアザラシの皮を張ったもので、上部中央に人の乗る穴が残されている。女性の舟ともいわれるウミアックは、やや大形で、主として交易に用いられている。北米先住民の間で発達したカヌーは、軽くてじょうぶな木のフレームにカバの樹皮を張り、樹脂で防水を施したものである。構造上すべての部分が湾曲した弓状で弾力性に富んでいるうえ、流線形であるため、1人で軽々と運べる軽さでありながら、かなりの量の荷物を運搬できる強靭(きょうじん)さを備えている。
今日、スポーツ競技などでよく知られているカヌーには、エスキモーおよびイヌイットのカヤックから原型を借りたカヤックと、北米先住民のカヌーから原型を借りたカナディアン・カヌーがある。その材料には、木やプラスチック、軽金属、ガラス繊維など、種々の素材が用いられている。
[濱本 満]
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知恵蔵
「カヌー」の解説
カヌー
競技としてのカヌーは、フラットウオーターと呼ばれる平水に設けた直線コースで行われるレーシングと、スラロームと呼ばれる河川の流れの中に設けたゲートによってコースを指示するものとに大別される。カヌーは、腰をおろして着座し両側にブレード面を有するダブルブレードパドルを用いるカヤック(Kayak)と、立て膝のまま乗艇し片側にのみブレード面を有するシングルブレードパドルを用いる男子競技のカナディアン(Canadian)とに分かれ、それぞれ1人乗り、2人乗り、4人乗りがある。レーシングの距離は、200mの短距離から1万mの長距離まであって、競技の特性も変化する。スラロームには、自然の地形や流れを巧みに利用してデザインされるコースの面白味がある。その他、流れの中を漕ぎ下るワイルドウオーターや、ゴールを目指してボールを奪い合うカヌー・ポロも行われている。
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カヌー
〘名〙 (canoe)
① かい(パドル)でこぐ原始的な小舟。丸木をくりぬいたり、獣骨の骨組みに樹皮や
毛皮を張ったもので、進行方向に向かってすわってこぐ。カヤック、あし舟、かご舟、丸木舟など。〔音引正解近代新用語辞典(1928)〕
② カヌー競技に用いる舟。
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デジタル大辞泉
「カヌー」の意味・読み・例文・類語
カヌー(canoe)
舵や竜骨のない小舟。木の幹をくりぬいた丸木舟や、枠組に獣皮や樹皮を張ったものなどがある。競技用のカヌーは後者が原型。
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カヌー【canoe】
丸太をくりぬいたり,木や竹などの骨組に獣皮や樹皮をはりつけた舟。語源は,カリブ海のハイチ島の原住民の舟canoaに由来する。木から造られるカヌーは,形態的な特徴から四つの型に分けられる。最も単純な型は,1本の丸太をくりぬき船体とする丸木舟(くり舟)である。丸木舟は,日本では縄文時代から使用されており,ヨーロッパでも先史時代から全域にわたって用いられていた。現在それらの地域では,ほぼ板張り舟にとって代わられてしまったが,アフリカ,インド,東南アジア,ニューギニア,南アメリカなどでは,おもに河川交通や漁労に大きな位置を占めている。
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世界大百科事典内のカヌーの言及
【舟∥船】より
…そして300年ころからは,トンガを拠点としてポリネシア各地への大規模な民族移動が始まり,1000年ころまでに,北はハワイ諸島,南はニュージーランド,東はイースター島に至る広大な範囲に広がっていったのである。ポリネシアには,大型の竜骨をもつ板あわせカヌーや,このカヌーを2隻横に並べて接ぎあわせた大型のダブルカヌーなどがあり,遠洋航海に適したこれらの船が,ポリネシア人の移住に重要な役割を果たしていたことは想像にかたくない。そして彼らが優れた航海術を背景にして島々に急速に進出していったことにより,ポリネシア全域は,言語,神話,社会制度,物質文化などあらゆる方面にわたって驚くほどの均質性をもつに至ったのである。…
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