フザリン酸(読み)フザリンサン

化学辞典 第2版 「フザリン酸」の解説

フザリン酸
フザリンサン
fusaric acid

5-butyl-2-pyridinecarboxylic acid.C10H13NO2(179.12).イネの馬鹿苗病菌Gibberella fujikuroi代謝産物無色の板状晶.融点108 ℃.イネ苗の無秩序な伸長を抑制する作用があり,またチフス菌に対して発育阻止作用がある.最近,ドーパミン-β-ヒドロキシラーゼの阻害作用があり,組織中のノルアドレナリンを減少させ,動物に顕著な血圧降下作用を示すとともに,ヒト高血圧症降圧剤として有効であることが見いだされた.[CAS 536-69-6]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

世界大百科事典(旧版)内のフザリン酸の言及

【抗生物質】より


[特異酵素阻害物質]
 65年ころから梅沢浜夫らによって新しく開拓された分野で,微生物生産物から,抗生物質的活性に基づかないで,動物の酵素を阻害する物質を探索し,新しい薬理作用をもった治療薬を得ようとするものである。そのうち,ペプシンを阻害するペプスタチンは胃潰瘍,十二指腸潰瘍に有効であり,カテコールアミン類合成を阻害するフザリン酸は血圧降下作用をもち循環器系の病気に有望である。またアミノペプチダーゼ阻害のベスタチンは,免疫系を促進する作用がある。…

【植物毒素】より

…一方植物毒素は,病原体の宿主特異性とは関係なく作用するので,非特異的毒素ともいう。たとえば,トマト萎(いちよう)病菌の生産するフザリン酸の液に各種植物を浸すと,宿主・非宿主の区別なく萎症状が現れる。植物毒素はイネいもち病菌などの糸状菌のほかに,タバコ野火病菌やインゲンマメかさ(暈)枯病菌などの細菌からも分離され,その化学構造も判明している。…

※「フザリン酸」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」