改訂新版 世界大百科事典 「ファンヘネップ」の意味・わかりやすい解説
ファン・ヘネップ
Arnold van Gennep
生没年:1873-1957
ドイツ生れの民族学者。バン・ジェネップとも呼ぶ。フランスで高等教育をうけ,スイスのヌシャテル大学教授やフランス外務省翻訳官などを務めたが,民族誌,民俗学に関する研究・著作活動を行い,おもにフランス語で発表した。トーテミズム,神話,伝説など未開社会の宗教にかかわる著作とフランスの各地方のフォークロアについての著作が多いが,その後の人類学研究に最も影響を与えて高く評価されているのは《通過儀礼Les rites de passage》(1909)である。世界各地の諸民族にみられるあまりにも変差の大きいさまざまの儀礼を,〈通過儀礼〉という新しいカテゴリーを導入することで,よりよく理解できることを明らかにしたのである。人または集団がある地位から次の地位へ,ある世界から他の世界へと移動するのに応じて実施される諸儀礼を一連のものとして体系的にとらえ,分離,過渡,統合という構造的パターンをなすことを見いだし,その全体的な機能についてすぐれた考察を行った。
執筆者:小川 正恭
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報