日本大百科全書(ニッポニカ) 「ビッグ・スリー」の意味・わかりやすい解説
ビッグ・スリー
びっぐすりー
big three
本来は三大巨頭、御三家などの意味だが、通常は、アメリカの三大自動車メーカーであるゼネラル・モーターズ(GM)、フォード、クライスラーの3社をさす。長くGMとフォードがアメリカの自動車販売台数で1、2位を占め、アメリカ政財界だけでなく、世界経済に多大な影響を与える巨大企業として君臨してきた。しかし2008年からの世界同時不況の直撃で、GM、クライスラーがアメリカ連邦破産法11条を申請して破綻(はたん)し、3社ともビジネスモデルの再構築を迫られている。
3社いずれもミシガン州に本社をもつ。フォード創業が1903年、GMが1908年、クライスラーが1925年と、おのおの100年前後の歴史をもち、その躍進は第一次世界大戦後のアメリカ経済の飛躍的成長やモータリゼーション時代到来の象徴であった。全米自動車労働組合(UAW)に代表されるように、労組の交渉力や政治力はきわめて強く、ミシガン州選出の上下両院議員を動かして、業界利益を政界や外交交渉に反映させてきた。割安な日本車の対米輸出増のため、1981年から1995年まで断続的に続いた日米自動車摩擦では、日本車の輸入制限などを強硬に主張した。
石油危機後の資源高で、高コストの大型車を大量生産するビジネスモデルは徐々に成立しなくなり、GMが日本のトヨタ自動車、スズキ、富士重工業、いすゞ自動車などと提携。フォードはマツダと、クライスラーはドイツのダイムラー・ベンツと次々に資本関係を結び、ビッグ・スリーを軸に自動車業界の世界再編が進んだ。しかし生産車種が大型車に偏重し、環境意識の高まりに応じたエコカー(環境対応車)の開発・実用化でも日本メーカーなどの後塵(こうじん)を拝した。2005年以降、ビッグ・スリーは販売不振に直面し、手元資金を確保するため海外メーカーへの出資から次々と手を引いたが、世界同時不況の波にのまれ、3社のうち2社が破綻に追い込まれた。今後、3社とも成長著しいエコカー分野への進出、大幅なリストラ、海外メーカーとの提携で再建に乗り出すが、これが新たな自動車業界の再編を招くとみられている。
[編集部]