ヒョウタンゴケ(英語表記)Funaria hygrometrica Hedw.

改訂新版 世界大百科事典 「ヒョウタンゴケ」の意味・わかりやすい解説

ヒョウタンゴケ
Funaria hygrometrica Hedw.

ヒョウタンゴケ科の蘚類。世界に広く分布し,日本でも全国に普通に産し,裸地上に生じるが,とくにたき火などの焼跡に好んで生える性質がある。植物体は小さく淡緑色,群生または散生する。茎は高さ0.5~1cm,葉は卵形で鋭頭,中央脈は先端に達する。雌雄同株胞子体をよく生じる。蒴柄(さくへい)は長さ3~6cm,成熟するとねじれて,乾湿に応じてゆるやかな旋回運動を行う。蒴は洋梨形で傾斜または下垂する。蘚蓋は皿形。蒴歯は16枚ずつ内外2列に並ぶ。ヒョウタンゴケは多方面から詳しく研究され,世界各国の植物学の教科書などで,スギゴケとともに蘚類の代表種として扱われている。英名cord moss,ドイツ語名Drehmoosはねじれる蒴柄の特徴に,またフランス語名charbonnièreは焼跡の炭を好むその生態に基づいて名づけられたもの。和名は蒴をヒョウタンに見立てたもの。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヒョウタンゴケ」の意味・わかりやすい解説

ヒョウタンゴケ
ひょうたんごけ
[学] Funaria hygrometrica Hedw.

コケ植物ヒョウタンゴケ科の代表的な種。湿った土の上に群生し、ほとんど全世界的に分布する。とくに火災跡や山火事の跡などに多量に発生することがある。茎の高さは1センチメートル以下と短く、茎の先のほうには卵形の葉が集まってつく。雌雄同株で、盛んに胞子体をつける。胞子体の柄は1~5センチメートルの長さで、この先に洋ナシ形をした蒴(さく)をつける。蒴は、初めは緑色をしているが、しだいに黄褐色となり、古くなると褐色になる。胞子体ができていないときは、似たような形態をもつ種類が多いため、見分けるのはむずかしい。

 ヒョウタンゴケはよく胞子体がつき、胞子も発芽しやすいので、培養は容易である。このため昔から植物生理学や遺伝学の実験材料として使われてきた。ヒョウタンゴケ科にはヒョウタンゴケ属のほかツリガネゴケ属やニセツリガネゴケ属などがあり、植物体にも似たものがあるが、胞子体の形状は著しく異なる。

[井上 浩]

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世界大百科事典(旧版)内のヒョウタンゴケの言及

【コケ植物(苔植物)】より

…ホンモンジゴケは銅イオンを好み,神社などの銅ぶきの屋根から雨水の落ちる場所に生育する。ヒョウタンゴケは焼け跡を好む性質がある。ヒカリゴケは深山の洞穴や大木のうろなど光のごく弱い場所に生える。…

※「ヒョウタンゴケ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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