日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
バル(Hugo Ball)
ばる
Hugo Ball
(1886―1927)
ドイツの作家。敬虔(けいけん)なカトリック信者の息子としてピルマゼンスに生まれる。大学の学位論文にニーチェを取り上げ、その影響で文化革新者としてたつことを決意し、演劇に転身。ベルリンでラインハルトの演劇学校に学んだのち、ミュンヘンの小劇場演出家となる。そこで画家カンディンスキーの諸芸術総合の理念に感化される。第一次世界大戦勃発(ぼっぱつ)とともにしだいに反戦に傾き、スイスへ亡命、チューリヒで芸術家クラブ「キャバレー・ボルテール」を開き、ダダ運動の創始者となる。とくに立体衣装と儀式で演出された音声詩朗読は有名。そののち著述家に転じ、『ドイツ知識人批判』(1919)、『ビザンティンのキリスト教精神』(1923)などを著し、隠遁(いんとん)と極貧のうちに没す。
[土肥美夫]
『土肥美夫・近藤公一訳『時代からの逃走――ダダ創立者の日記』(1975・みすず書房)』
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