ハシドイ(英語表記)Syringa reticulata (Bl.) Hara

改訂新版 世界大百科事典 「ハシドイ」の意味・わかりやすい解説

ハシドイ
Syringa reticulata (Bl.) Hara

白い花の円錐花序多数つけるモクセイ科の落葉小高木で,温帯山地の沢沿いに多い。高さ12m,径40cmに達する。樹皮は帯褐灰白色,一年枝は栗灰色で皮目があり,先端が枯れ落ちて頂芽を欠く。葉は十字対生,まれに3輪生し,楕円形ないし広卵形で先が細くとがり,長さ6~10cm,裏面に軟細毛がある。6~7月,前年枝端の1対の芽から伸びた枝の一方または両方に,長さ20cm前後の円錐花序を頂生する。花冠は白く上部が4裂し,おしべは2本,めしべの花柱は長い。秋,長楕円形の蒴果(さくか)が熟し,2裂して翼のある種子2個を出す。南千島北海道から熊本県中部までと朝鮮に分布し,北海道ではドスナラと呼ばれる。材は,心材が淡褐色でやや堅く耐久力があり,柱,土台,器具材などに用いられる。庭園樹として植えられる。葉裏が無毛の変種マンシュウハシドイvar.mandshuricaMaxim.) Haraは,日本,朝鮮のほか,中国東北区と北部,東シベリアにも分布する。

 ハシドイ属Syringaヨーロッパからアジアにかけて30余種があり,ヨーロッパ南部~西アジア原産のライラックムラサキハシドイ)をはじめ,花木として栽培されるものが多い。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハシドイ」の意味・わかりやすい解説

ハシドイ
はしどい
[学] Syringa reticulata (Bl.) Hara

モクセイ科(APG分類:モクセイ科)の落葉高木。高さ5~10メートル。葉は対生し、広卵形で長さ6~10センチメートル、先は急にとがり、縁(へり)に鋸歯(きょし)はなく、裏面に軟細毛がある。6~7月、長さ15~25センチメートルの円錐(えんすい)花序をつくり、小さな白色花を多数開く。花冠は深く4裂して筒部は短く、雄しべは2本。果実は蒴果(さくか)、狭長楕円(だえん)形で長さ約2センチメートル、秋に熟して2裂する。千島列島南部、北海道の沢沿いに多く、本州から九州、および朝鮮半島に分布する。変種マンシュウハシドイは葉の裏面に毛がなく、北海道、本州、四国、九州、および朝鮮半島、中国、東シベリアに分布する。庭木として植え、材は耐久性があるので、建築、器具材にする。ハシドイ属は北半球に約20種ある。

[小林義雄 2021年7月16日]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ハシドイ」の意味・わかりやすい解説

ハシドイ
Syringa reticulata

モクセイ科の落葉小高木で,キンツクバネともいう。アジア東部の温帯の山地や石灰岩地に生える。樹皮は灰白色で皮目が散生しサクラに似ている。小枝は灰褐色で毛はない。葉は柄があって対生し,長さ6~8cmの広卵形で鋭尖頭,全縁である。初夏に,前年出た枝の先端に大型の円錐花序をなして,白色5弁の小花を密につける。萼は杯形で無毛,花冠は漏斗形で4深裂する。花にはかすかに香気がある。果実は木質で,長楕円形の 蒴果となり,熟すると縦に裂ける。種子は扁平で翼をもつ。ヨーロッパ原産の紫花をつけるライラックはごく近縁の植物でムラサキハシドイの和名もある。花,花序ともにハシドイよりも大きい。

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百科事典マイペディア 「ハシドイ」の意味・わかりやすい解説

ハシドイ

モクセイ科の落葉小高木。北海道〜九州中部の山地にはえ,北海道には多い。葉は広卵形で先はとがる。6〜7月,今年枝の先に円錐花序を出し,白色の花を多数開く。花冠は径約5mmで,深く4裂。果実は木質で,10月に褐色に熟し,2裂して翼のある種子を出す。庭木とする。

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