トロウ(英語表記)Martin A.

大学事典 「トロウ」の解説

トロウ
Martin A.

アメリカの社会学者。カリフォルニア大学バークレー校と同校公共政策大学院で教鞭をとり,高等教育の量的拡大に伴うシステム全体の質的な構造変動を論じた。進学率15%までのエリート型から,15~50%までのマス型,50%を超えるユニバーサル型へと移行を遂げる発展段階説を唱え,高学歴化が進む高等教育のあり方について日本をはじめ世界的影響を与える問題提起を行った。支配階級に奉仕する少数者の特権から,多様な社会的要求に応じた国民の権利,万人に教育を保障する義務へと認識の比重が変わり,それに応じてカリキュラムや教育方法も弾力化・情報化・国際化などが進む一方,管理運営のあり方を含めて教育と学歴の質をどう保証するかが問われた。この過程は,同時的・全面的転換を意味するのではなく,社会により複合的な形態をとりながら不等に,時間的ずれを伴って進行していくとされ,そうした分析枠組みに基づいて国際比較に開かれた議論を展開した。著書に『高学歴社会の大学―エリートからマスへ』東京大学出版会(1976年),『高度情報社会の大学―マスからユニバーサルへ』玉川大学出版部(2000年)などがある。
著者: 大前敦巳

出典 平凡社「大学事典」大学事典について 情報