日本大百科全書(ニッポニカ) 「マス」の意味・わかりやすい解説
マス
ます / 鱒
硬骨魚綱サケ目サケ科の魚類のうち、「マス」あるいは「~マス」という名のついた種類の俗称。市場などでは、北太平洋で多産するカラフトマス(別名セッパリマス)の塩漬けしたものをマスとよぶことが多いが、これは日本産のマス(サクラマス)と区別して名づけたものである。実際には両種ともマスとよぶ地方があるが、サクラマスはホンマスまたはママスとよばれることが多く、カラフトマスとは肉質が異なるので実質的にも区別される。また、サクラマスの河川型がヤマメとよばれる魚である。ほかにシロザケ(サケ)をオオメマスとよぶ地方もあるほか、ベニザケの別名にベニマスがあり、この魚の河川型がヒメマスとよばれる魚である。
サケ・マス類(鮭鱒(けいそん)類)ということばからは、マスとよばれるものはサケ科の一部という印象を受けるが、実際にはサケとよばれるものは少ない。サクラマスは、シロザケ、マスノスケ、ベニザケ、カラフトマスなどと同じく、北太平洋とその周辺海域に特産のサケ属Oncorhynchusの仲間で、マスとよばれる魚類のもっとも日本的なものである。かつては、サクラマスの標準和名としてマスという名を与える傾向にあったが、実用的ではなく、日本魚類学会でも本種の標準和名をサクラマスとすることを提唱している。また、サクラマスが河川へ遡上(そじょう)したものをカワマスとよぶ地方があるが、ほかにカワマスとよばれることがあるものに、北アメリカから移入されたブラウントラウトbrown troutとブルックトラウトbrook troutがある。ブラウントラウトはニジマス属Salmo、ブルックトラウトはイワナ属Salvelinusに含まれる別種である。
なお、釣り人はニジマスをマスとよぶことがある。このように、マスという名称には、サケ科のサケ属、ニジマス属、イワナ属のある種が「~マス」の名で含まれている。サケ科のなかでもイトウ属(イトウ)はマスとはよばない。
[阿部宗明]