デバイ‐シェラー環(読み)でばいしぇらーかん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「デバイ‐シェラー環」の意味・わかりやすい解説

デバイ‐シェラー環
でばいしぇらーかん

一定波長(単色)のX線を粉末試料や多結晶質の物質に入射したとき得られる入射点を中心とする環状回折像をいう。これらの物質は乱雑な方位をもつ多数の微小結晶の集まりである。一定波長のX線のブラッグ反射は、結晶内のいずれかの格子面がブラッグ条件を満足するような方位に向いていない限りおこらないが、粉末試料や多結晶質の試料においては、各格子面に関してそれぞれブラッグ条件を満足し入射X線を反射しうるような方位をもつ微小結晶が統計的に多数ありうる。試料に単色のX線を当て、試料の背後写真フィルムを入射X線束に直角に置けば、微小結晶からのブラッグ反射は、入射X線とフィルムの交点を中心とする多くの同心の環からなる回折像をつくる。この像は試料の結晶に特有な特徴をもっている。像中の回折環は1916年(第一次世界大戦中)にデバイシェラーによって発見されたので、デバイ‐シェラー環という。この多結晶からの回折環を観察するX線回折法をデバイ‐シェラー法、粉末回折法などという。この方法は、固体物質に多い多結晶質の物質に適用できるので、応用範囲が広い。とくに、この方法で得られた測定値標準試料データと比較されて物質の同定に利用される。回折環は写真に撮影できるが、またX線回折計を用い、回折する角度関数として、回折強度の変化を自動的に記録することも多い。

[三宅静雄・石田興太郎]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例