チオ硫酸(塩)(読み)チオリュウサンエン

化学辞典 第2版 「チオ硫酸(塩)」の解説

チオ硫酸(塩)
チオリュウサンエン
thiosulfuric acid(thiosulfate)

H2S2O3とその塩.IUPACの受け入れる慣用名.H2SO4=[SO2(OH)2]のOをSに置換する際に,=Oを置換した[SO(OH)2S]とOHのOを置換した[SO2(OH)(SH)]があり,置換命名法ではスルフロチオO-酸(sulfurothioic O-acid)とスルフロチオS-酸(sulfurothioic S-acid)に区別する.旧称次亜硫酸(塩)(hyposulfurous acid,hyposulfite)は誤り.酸:H2S2O3(114.15).遊離酸は分離されていないが,エーテル付加物は得られている.H2Sのエーテル溶液に,-78 ℃ でSO3のCCl2F2溶液を加えて反応させ,溶媒を低温蒸留除去すると,無色の油状エーテル付加物H2S2O3・2[(C2H5)2O]が得られる.エーテル溶液は低温では安定である.しかし,0 ℃ でも分解が起こり,室温ではすみやかに分解してH2SとSO3になる.水とも反応する.強い二塩基酸.pK1 0.6,pK2 1.72(25 ℃).[CAS 14921-76-7:チオ硫酸][CAS 13686-28-7:スルフロチオO-酸].
塩:M2S2O3多くの金属の塩が固体で得られ,水和物も多く,いずれも空気中で比較的安定である.たとえば,アルカリ金属塩は,亜硫酸塩水溶液に硫黄を加えて加熱,濾過後,濾液を濃縮すると得られる.ほかの金属塩もアルカリ金属塩から複分解で得られる.[S2O3]2- をもつイオン結晶,またはそれに準じた構造をもつ.無色の結晶.アルカリ金属,Mg,Caなどの塩は水に可溶,Ba塩は微溶,Ag,Pbなどの塩は難溶.水溶液は室温では比較的安定であるが,空気に触れて徐々に酸化される.水溶液を酸性にすると硫黄を沈殿する.酸化剤と反応する.I2 でテトラチオン酸塩M2S4O6に,Cl2 で硫酸塩になる.また,重金属(Ag,Cu,Auなど)と錯体をつくるので,これらの塩は水に不溶であるが,過剰のアルカリチオ硫酸塩を加えると水に可溶の錯体となって溶ける.Na塩の用途は銀塩写真定着用など([別用語参照]チオ硫酸ナトリウム).NH4塩もNa塩と同様な用途にも用いられる.Ba塩はマッチや爆薬,Mg塩は医薬品にも用いられる.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

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