セラミック・ターボチャジャー

日本の自動車技術240選 の解説

セラミック・ターボチャジャー

レシプロエンジンの有力な代替機関としてガスタービンが研究開発されてきた。特に熱効率向上の観点からタービン入り口温度の高温化が必要で,耐熱材料としてセラミックの採用が検討されてきた。この技術を乗用車用ターボチャージャに応用し,ターボラグを改善した。ガスタービンに比べターボチャージャの温度は1200Kと低いため,破壊靭性と強度の高い窒化珪素を選択した。成形はガスタービンと同様にブレードリング部とシャフト部を別々に成形し一体化している。製法としてガス圧焼結法を採用し,三次元有限要素解析で形状の最適化をはかることにより,高強度のロータを得ることができた。金属製ロータと異なり1)背板部から軸へ向かっての手-パ形状2)背板部から軸部の接続形状3)翼先端部から根元部への肉厚分布4)イクスデューサ側のハブ形状5)翼の肉厚形状に留意して設計されている。軸は強度,製造コストの面から金属軸を用いた。基本組成,熱膨張係数の著しく異なる異種材料の接合は技術的に難しい。接合位置,要求強度,耐熱性などを考慮して,各種接合法を検討し,軸折損時にエンジンへの影響の少ない高音部接合とし,接合法としてろう付,及び焼ばめを選定した。ホットスピンテストを実施すると共に,Slow Crack Growth理論に基づく亀裂伸展速度の定数をもとめ,寿命予測を行った。寿命には強度と負荷の影響が大きいが,強度は初期欠陥の長さの関数となる。最大欠陥の長さに相当する破壊応力を求め,この破壊応力に相当する応力をロータに負荷すると,残存したロータ内に残存する欠陥の長さは許容最大欠陥長さ以下になっている。このアイデアに基づいて保証試験を実施し,品質を保証した。回転体アッシーの回転慣性モーメントは約34%低減し,ターボチャージャが0から10万rpmに達するまでの時間は約36%向上した。保管場所日産自動車(株)車両先行開発部 (〒243-0192 神奈川県厚木市岡津古久560-2)
製作(製造)年1985
製作者(社)日産自動車 株式会社
資料の種類その他(資料)
現状保存・非公開
会社名日産自動車(株)
通称名セラミック・ターボチャジャー
搭載車名フェアレディZ
製作年1985
構造・方式・手段・方法等窒化珪素セラミック製ターボロータを射出成形後焼結し,金属軸にろう付けと焼ばめにより接合。最大許容欠陥長さに相当する応力を負荷し,残存したロータを選択することにより,寿命を保証している。
機能・作用等高温強度が高い軽量材料として,比重が耐熱金属の半分以下の脆性材料であるセラミックをロータを金属軸に接合し,回転慣性モーメントを低減した。ターボ過給機で問題となる,過渡時の遅れ(加速時のターボラグ)を低減した。
効果回転慣性モーメントを約2/3に低減。加速応答性を向上
参考文献・日産技報 Vo21 P125~134 1985 ・SAE Paper861128・第14回日本ガスタービン学会 講演会前刷 ・日本機械学会 北陸地方講演会・日本学術振興会 高温セラミック材料第124委員会、将来加工技術第136委員会など

出典 社団法人自動車技術会日本の自動車技術240選について 情報