ストレーチー(Giles Lytton Strachey)(読み)すとれーちー(英語表記)Giles Lytton Strachey

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

ストレーチー(Giles Lytton Strachey)
すとれーちー
Giles Lytton Strachey
(1880―1932)

イギリスの批評家、伝記作家。エリザベス朝以来の名門の生まれで、父はインド総督府の高官軍人。ケンブリッジ大学で知り合ったフォースター、経済学者ケインズらとともに知的友好団体であるブルームズベリー・グループを結成した。イギリスの伝記文学に新しい感受性を導き入れたことで知られている。彼の方法の特徴は、優雅な冷笑を含んだ筆致で対象をえぐり出し、偶像を完膚なきまでに破壊することにある。ときにその筆鋒(ひっぽう)のゆえに、グロテスクな戯画になることもあるが、価値の尺度が大幅に転換した第一次世界大戦後の精神風土に根ざしており、反響をよんだ。イギリス伝統の伝記文学とフランス心理小説の混血児といえる。作品には、批評に『フランス文学の道標』(1912)、伝記に『ビクトリア朝のおえらがた』(1918)、『ビクトリア女王』(1921)、『エリザベスとエセックス』(1928)、『ささやかな肖像』(1931)などがある。1932年1月21日没。

[出淵 博]

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