スコパス(英語表記)Skopas

デジタル大辞泉 「スコパス」の意味・読み・例文・類語

スコパス(Skopas)

古代ギリシャの彫刻家建築家。前4世紀に活躍作品アテナ‐アレア神殿破風群像」など。生没年未詳。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「スコパス」の意味・読み・例文・類語

スコパス

(Scopas) 紀元前四世紀ごろのギリシアの建築家、彫刻家。ヘレニスティック期彫刻の先駆者。パロス島出身。激しい感情表現にすぐれた彫刻を残す。テゲアのアテナ・アレア神殿の破風(はふ)彫刻が代表作。生没年不詳。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「スコパス」の意味・わかりやすい解説

スコパス
Skopas

前4世紀のギリシアの彫刻家。生没年不詳。エーゲ海のパロス島出身。大理石彫刻を得意とし,その作品は量感に満ちた体軀,強い意志の表出をもつことを特徴としている。それは激しい情感を表すヘレニズム美術先駆を成すものであった。前395年に焼け落ちたテゲアのアテナ・アレア神殿の再建(前340年ころ)に建築家として従事したことが知られる。この神殿の破風を飾っていた彫刻の断片が発見されており(アテネ考古学美術館),それらもスコパスの作であろうと考えられている。スコパスは,彫刻家ブリュアクシス,レオカレスティモテオスとともに,ペルシア領カリア地方総督マウソロスの壮大な墓廟マウソレウムの装飾に参加し,その東面の浮彫フリーズを制作したと伝えられる。当地からは,ギリシア人とアマゾン族の戦闘を描いた長大なフリーズの断片が出土しており(大英博物館その他),そのうちのテゲアの彫刻と似た作風を示す部分が,スコパスの手に成るものと推定されている。その他古代の文献は,彼が制作した多くの神々や半神の像があったことを伝えているが,それらの原作はのこされていない。しかしローマ時代の模刻像のいくつか,たとえば《踊るマイナス》(ドレスデン国立美術館),《ランズドーンのヘラクレス》(カリフォルニア,マリブ美術館),《メレアグロス》(バチカン美術館その他)などが,彼の作風を伝えるものと考えられている。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「スコパス」の意味・わかりやすい解説

スコパス
すこぱす
Skopas

生没年不詳。古代ギリシアの彫刻家。プラクシテレス、リシッポスと並ぶ紀元前4世紀のもっとも著名な彫刻家。パロス島出身。父アリスタンドロスは青銅彫刻家。前377年ごろアテネに赴き、以後アッティカ、ペロポネソス、小アジア各地で制作。その作風は、プラクシテレスが神々の優美な様式を確立したのに対し、人間の内的感情の表出に傑出し、ヘレニスティック期彫刻の先駆をなした。古代の文献とその様式から彼の作と推定されるものに、テゲアのアテナ・アレア神殿の破風(はふ)彫刻とアスクレピオスとヒュゲイアの像(アテネ国立考古博物館)、エフェソスのアルテミス神殿列柱の浮彫り、ハリカルナッソスのマウソレウム東フリーズの浮彫り(大英博物館)などがある。いずれも深く彫られた目や衣装の襞(ひだ)の表現に彼の特徴がみられる。

[前田正明]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「スコパス」の意味・わかりやすい解説

スコパス
Skopas

ギリシアの彫刻家,建築家。プラクシテレス,リュシッポスと並んで前4世紀を代表する巨匠。パロス島出身と伝えられる。プラクシテレスが甘美かつ優雅な情緒的表現を完成したのに対し,彼は激しい感情表現によって人物の内面性を追究し,その様式はのちの彫刻に多大の影響を与えた。現存する作品に前4世紀中頃に彼が再建したと伝えられるテゲアのアテナ=アレア神殿の破風彫刻 (アテネ国立考古学博物館) ,エフェソスのアルテミス神殿の浮彫のある円柱 (大英博物館) ,ハリカルナッソスのマウソレイオンの東面フリーズ (同) ,『陶酔のマイナス』 (ローマ時代模刻,ドレスデン国立絵画館) ,『メレアグロス』 (同,バチカン美術館) などがある。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

百科事典マイペディア 「スコパス」の意味・わかりやすい解説

スコパス

プラクシテレスリュシッポスとともに前4世紀ギリシアの代表的彫刻家。パロス島出身。テゲアのアテナ・アレア神殿の新築を指導,またその破風(はふ)彫刻の一部を手がけ,エフェソスのアルテミス神殿の彫刻にも参加したと伝える。プラクシテレスとは対照的に動的・劇的な表現を得意とした。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

山川 世界史小辞典 改訂新版 「スコパス」の解説

スコパス
Skopas

前4世紀

大理石の島パロスの出身で,プラクシテレスと並び称せられる前4世紀ギリシアの代表的彫刻家。マウソロスの廟の建築装飾において指導的役割を果たし,現存の部分は彼の男性的作風を示す。

出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報

旺文社世界史事典 三訂版 「スコパス」の解説

スコパス
Skopas

生没年不詳
前4世紀のギリシアの彫刻家・建築家
肉体の運動表現よりも人間の感情表現に重きをおき,ヘレニズムの先駆をなした。

出典 旺文社世界史事典 三訂版旺文社世界史事典 三訂版について 情報

世界大百科事典(旧版)内のスコパスの言及

【ギリシア美術】より

…前5世紀末のペロポネソス戦争,前4世紀の絶えまないポリス間の対立・抗争を通じて,人びとの感情・思想はより現実的・人間的になり,宗教的関心もしだいに弱まった。この傾向を反映して,後期クラシックの彫刻家プラクシテレス,スコパス,リュシッポスらは,優雅で人間的情感にあふれる彫像を作った。
[ヘレニズム時代(前320‐前30)]
 アレクサンドロス大王の没年ころから,プトレマイオス朝エジプト王国の滅亡までの時代をいう。…

※「スコパス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android