スキルスがん(読み)すきるすがん(英語表記)scirrhous carcinoma

日本大百科全書(ニッポニカ) 「スキルスがん」の意味・わかりやすい解説

スキルスがん
すきるすがん
scirrhous carcinoma

腺(せん)がんの一種。硬がん、びまん性がんともよばれる。

 腫瘍(しゅよう)は、がん細胞の集団からなるがん胞巣(ほうそう)(実質)と、それを支える結合組織(間質)から構成される。スキルスがんは、がんの実質に対し、間質が著しく多く線維芽細胞が豊富なコラーゲンを産生しながら増生する。そのため、硬い病巣を形成するのが特徴である。がん細胞は間質のすきまに少数の集塊を形成したり、散在性に浸潤している。胃がん、乳がんのスキルスがんではこのような組織形態をとるものが多い。スキルス胃がんの場合、胃壁の肥厚・硬化を特徴とするが、がん胞巣が小さく、胃粘膜の表面にあまり現れず、胃壁の内部(粘膜下層や筋層、漿膜(しょうまく))をびまん浸潤性に増殖して、潰瘍(かいよう)も形成しない。そのため、病巣と周辺組織との境界が不明瞭(ふめいりょう)で、内視鏡検査で発見するのがむずかしいことがある。漿膜外に浸潤したり、腹膜播種(はしゅ)やリンパ節転移をきたす頻度が高いため、治癒切除が困難なことが多く、予後が悪い傾向にある。胃がんの肉眼型分類では、4型のびまん浸潤型に相当する。

[渡邊清高 2019年5月21日]

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家庭医学館 「スキルスがん」の解説

すきるすがん【スキルスがん】

 進行胃がんは、X線検査や、内視鏡(ないしきょう)によって観察し組織を採取して生検せいけん)を行なうことで、ほぼ診断できます。
 ところが、胃がんのなかには、まれに、スキルス胃がん(硬性(こうせい)がん)と呼ばれる、診断、治療のむずかしい悪性度の高いものがあります。
 ほとんどの胃がんは、胃の粘膜(ねんまく)に腫瘤(しゅりゅう)を形成して、胃壁の表面から盛り上がったり、くぼんだり、潰瘍(かいよう)をつくったりしているのですが、スキルスがんは、腫瘤をつくらず、かたい線維組織をつくりながら、胃壁の中の粘膜下層や漿膜(しょうまく)下層にばらまかれるような形で広がっていきます。進行が速く、腹膜(ふくまく)への転移をおこしやすいがんで、比較的若年層にみられます。
 検査は、内視鏡よりも、表面からは見えない粘膜下まで観察できる超音波検査が有効です。

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