ジュース(Eduard Suess)(読み)じゅーす(英語表記)Eduard Suess

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

ジュース(Eduard Suess)
じゅーす
Eduard Suess
(1831―1914)

オーストリアの地質学者。ロンドンに生まれる。1857~1901年ウィーン大学教授、1898~1911年オーストリア科学アカデミー会長を務めた。アルプス山脈の形成についての論文と、著書『地球の相貌(そうぼう)』Antlitz der Erde(1883~1888)とによって世界の地質学界に非常に大きい影響を与えた。アルプス山脈については弧状の非対称的な形態を認め、側方からの押しによって生じたとし、その地殻変動の時期は、中生代から第三紀鮮新世までの非常に長い期間のものであったとした。『地球の相貌』は最初の世界全体の地質誌で、膨大な文献の渉猟と深い思索のもとに書かれている。褶曲(しゅうきょく)山地、楯状地(たてじょうち)、ゴンドワナ大陸テチス海、現在の大洋など、古今の大陸大洋の世界における分布と地質時代的変遷を論じ、現在の地震、火山、第四紀の海水面変化に至るまで言及し、これらの統一総合化を初めて行った。その個々の説については支持を受けなくなった点も多いが、世界の地質を空間的、時間的に初めて総合化したことの地質学的、思想史的意義は非常に大きい。

[木村敏雄]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例