シュッツ(Heinrich Schütz)(読み)しゅっつ(英語表記)Heinrich Schütz

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

シュッツ(Heinrich Schütz)
しゅっつ
Heinrich Schütz
(1585―1672)

17世紀ドイツを代表する作曲家で、シャインシャイトとともに「三大S」とよばれた。10月14日、中部ドイツのゲーラ近郊ケストリッツに生まれる。13歳でカッセル宮廷礼拝堂少年聖歌隊隊員となる。マールブルク大学で法律を学ぶが、1609年ヘッセン伯モーリッツの奨学金でベネチアに留学、13年までG・ガブリエリに師事し、ベネチア楽派の色彩的な複合唱様式を身につける。帰国後、カッセル宮廷第二オルガン奏者を経て、17年からドレスデンのザクセン選帝侯ヨハン・ゲオルク1世の宮廷楽長となる。19年、自らの結婚の記念として出版した『ダビデ詩篇(しへん)』(作品2)は、ガブリエリに学んだ複合唱様式を示している。27年ドイツ最初のオペラ『ダフネ』を作曲・上演したシュッツは、翌28年から約1年間、ふたたびベネチアを訪れ、モンテベルディの強い影響を受ける。『シンフォニエ・サクレ第1部』(作品6、1629)などは、三十年戦争で縮小を余儀なくされた宮廷楽団の実情を反映し、小編成のモノディ様式を採用して効果をあげている。三十年戦争中はデンマーク宮廷にたびたび招かれたが、終戦の48年には伝統的なポリフォニー様式の名作『ガイストリッヒェ・コアムジーク』(作品11)を出版し、円熟期に入る。晩年は『ルカ』『ヨハネ』『マタイ』の三大受難曲をはじめ、『キリスト降誕の物語』『ドイツ語マニフィカート』と傑作を連ね、72年11月6日ドレスデンで、87歳の高齢で世を去った。シュッツは、バッハ以前最大のプロテスタント教会音楽家として、ドイツ語歌詞と音楽の融合に多大の功績を残している。

樋口隆一

『R・テラール著、店村新次・浅尾己巳子訳『シュッツ』(1981・音楽之友社)』

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