シャイ・ドレーガー症候群

六訂版 家庭医学大全科 の解説

シャイ・ドレーガー症候群
(脳・神経・筋の病気)

 1960年にシャイとドレーガーによって報告された病気で、脊髄小脳変性症のひとつの種類です(遺伝しない脊髄小脳変性症)。

 脊髄小脳変性症には多くの種類がありますが、おおまかに遺伝性のものと遺伝性でないもの、主に小脳だけが侵されるものと、小脳とその他の部分も侵されるものとに分けられます。このなかに、遺伝性ではなく、小脳とその他の部分も侵される多系統萎縮症(たけいとういしゅくしょう)と呼ばれるグループがあります。

 このなかには、オリーブ・(きょう)・小脳萎縮症(小脳症状主体)、線条体黒質変性症(せんじょうたいこくしつへんせいしょう)パーキンソン症状主体)、シャイ・ドレーガー症候群(自律神経症状主体)の3つの病気が含まれます。従来これらは別の病気と考えられてきましたが、脳の組織共通の変化が確認されたため、多系統萎縮症としてまとめられています。

 シャイ・ドレーガー症候群は40~60代で発症し、男性の割合が多く、早くから自律神経症状が出始めます。自律神経症状には、起立性低血圧(きりつせいていけつあつ)(寝ている状態から立ち上がる時に著しく血圧が下がり、失神することもある)、発汗障害(汗が出にくい)、排尿障害(尿が頻回に出る、逆に尿が出にくい)、陰萎(いんい)インポテンツ)などがあり、経過中に小脳症状やパーキンソン症状が加わってきます。また睡眠時の無呼吸や窒息(ちっそく)の危険も多いとされ、十分注意する必要があります。

 診断は、症状や画像検査(CTMRI)、自律神経の検査によります。病気そのものを治す薬はありませんが、自律神経障害に関しては各症状に対する薬を使います。起立性低血圧は立ち上がる時に十分な注意が必要で、夜間に頭を高くさせたり弾性ストッキングを使うこともありますが、失神を起こしやすいので、寝た状態での生活を余儀なくされる場合も少なくありません。

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 の解説

シャイ・ドレーガー症候群
シャイドレーガーしょうこうぐん
Shy-Drager syndrome

原因不明の起立性低血圧,インポテンツなどの自律神経症状と運動系神経障害が現れる疾患。 1960年シャイとドレーガーが報告し,正式な病名として認められた。 40~60歳頃の発症が多く,進行すると尿失禁,振顫などの症状のほか,パーキンソン病のような症状が見られることもある。症状はゆるやかに進行していき,寝たきりになることも多く,自覚症状発症後2~19年 (平均7~8年) で死亡することが多い。起立性低血圧の治療のためインドメサシンなどが投与されるが,神経症状に対し有効な治療薬はまだない。抗パーキンソン剤が有効との指摘もある。

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