シモツケ(読み)しもつけ

改訂新版 世界大百科事典 「シモツケ」の意味・わかりやすい解説

シモツケ (下野)
Japanese spirea
Spiraea japonica L.f.

山地日当りのよいところに生えるバラ科の落葉低木。高さ1m内外になり,枝は褐色。葉は互生して狭卵形ないし卵形,縁に鋸歯がある。花の時期は,生育地によって多少異なるが,6~8月,散房状にむらがって小さな5弁花をつけ,普通は淡い紅色。おしべは多数。花後,小さな5個の袋果をつける。シモツケは,生育地の下野国からつけられた名であるが,本州から九州までひろく見られ,また中国大陸にも分布し,変異が多い。花が美しいので,よく庭に植えられている。ユキヤナギコデマリやトサシモツケS.nipponica Maxim.var.tosaensis Makinoもシモツケの仲間で,いずれも栽培が容易であり,切花にも利用される。

 コデマリに近縁のものには,近畿地方以西の本州,四国および九州の岩石地に生えるイワガサS.blumei G.DonやイブキシモツケS.nervosa Franch.et Savat.があり,トサシモツケと同じ種には,中部地方以北のイワシモツケS.nipponica Maxim.var.nipponica紀伊半島のキイシモツケvar.ogawae Yamanakaが知られている。関東から北では,マルバシモツケS.betulifolia Pallasがよく見られる。シモツケ属Spiraea北半球温帯に100種あまりが知られているが,そのほとんどの種は,乾いた土地に生える。しかし,本州の一部北海道にあり,旧大陸北部に分布しているホザキシモツケS.salicifolia L.は,日当りのよい湿地に生えている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「シモツケ」の意味・わかりやすい解説

シモツケ
しもつけ / 下野
[学] Spiraea japonica L.f.

バラ科(APG分類:バラ科)の落葉低木。茎は叢生(そうせい)し、高さ約1メートル。葉は互生し、単葉で広披針(こうひしん)形から卵形で、先端はややとがり、縁(へり)は二重鋸歯(きょし)があり、裏面は淡緑色か、やや白みを帯びる。短い葉柄がある。5~8月、新枝の先に複散房花序をつくり、淡紅色で径約5ミリメートルの5弁花を開く。雄しべは多数、花弁よりはるかに長い。雌しべは5本。果実は袋果(たいか)。山地に生え、北海道から九州、および朝鮮半島、中国に分布する。名は、この植物が下野(しもつけ)(栃木県)で最初に発見されたからという。本種は形態的に非常に変異に富んでおり、いろいろと細分されることがある。また観賞用として人家や公園によく植栽される。シモツケ属は約100種あり、おもに北半球の温帯に分布する。日本にはイワガサ、ホザキシモツケなど約10種が自生し、シジミバナ、ユキヤナギなどが栽培される。

[鳴橋直弘 2020年1月21日]


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百科事典マイペディア 「シモツケ」の意味・わかりやすい解説

シモツケ

本州〜九州,東アジアに分布し,山野にはえるバラ科の落葉低木。枝は根元から群がって出る。葉は長楕円形で先はとがり,縁には鋭い鋸歯(きょし)がある。5〜8月,小枝の先に散房状に多数の淡紅色花を密につける。花は径3〜6mm,花弁は5枚,おしべは多数で花弁よりはるかに長い。近縁のホザキシモツケは北海道,本州(栃木県日光,長野県霧ヶ峰)の山地の湿原にはえる。葉は披針形で,6〜8月,茎頂に多数の淡紅色花を大きな円錐状に密につける。ともに庭木,切花とする。

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世界大百科事典(旧版)内のシモツケの言及

【シモツケソウ】より

…花が終わると小さな袋果ができる。本州から九州まで分布し,北海道には変種のエゾノシモツケソウvar.yezoensis Haraがある。また,北海道と本州には,白い花の咲く大型のオニシモツケF.kamtschatica Maxim.があり,よく群生する。…

※「シモツケ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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