シットウェル(Edith Sitwell)(読み)しっとうぇる(英語表記)Edith Sitwell

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

シットウェル(Edith Sitwell)
しっとうぇる
Edith Sitwell
(1887―1964)

イギリスの女流詩人ヨークシャースカーバラ生まれ。オズバート、サシェベレル兄弟の姉。1916年、年刊の詩選集『車輪』(~1921)を創刊、その詩誌に拠(よ)って、弟らと詩壇に斬新(ざんしん)、華麗、そして高踏的な新風をもたらし、1918年に発表した詩集道化(どうけ)らの家』の成功で詩人としての地歩を固めた。以降『正面』(1922)、『田園の喜劇』(1923)と詩集を世に問うたが、実験的な新奇な視点からのイメージと繊細な詩句の響き、そして古い貴族の家柄の生まれにふさわしい洗練された高雅な気品も相まって、一時彼女の自作詩の朗読会はセンセーションを巻き起こした。しかし、1929年の『黄金海岸の奇習』の風刺的な長編詩の発表あたりからようやく詩風の変化が認められ、現代社会批判の姿勢を強め、予言者風の格調を帯びるに至る。とくに第二次世界大戦中には宗教色の濃い作品を数多く書いたが、なかでも、ドイツ空軍によるロンドン空襲に材をとった「なおも雨が降る」の詩編は彼女の最上の作品の一つとして有名。ほかに「原子時代の三詩編」(1949)も忘れがたい。

沢崎順之助

『酒井善孝訳『世界名詩集大成10 正面・街のうた・原子時代の三部作』(1959・平凡社)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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