コバルト鉱物(読み)コバルトこうぶつ(英語表記)cobalt mineral

改訂新版 世界大百科事典 「コバルト鉱物」の意味・わかりやすい解説

コバルト鉱物 (コバルトこうぶつ)
cobalt mineral

コバルトを主成分の一つとして含む鉱物をいう。コバルトの鉱石は,現在日本からは産出していない。主要産地はアフリカのコンゴ民主共和国からザンビアにまたがるコッパー・ベルトである。北のコンゴ民主共和国では銅の1/30,南のザンビアでは1/300程度のコバルトをリンネ鉱linnaeite Co3S4カロライトcarrollite(Co,Cu)3S4などのチオスピネルとして含んでいる。コバルトはヒ素と結合して,輝コバルト鉱(Co,FeAsS,スクテルード鉱skutterudite(方コバルト鉱ともいう)(Co,Ni)As3として銀-コバルト鉱脈中に産出する(ノルウェー,スウェーデン,ドイツ,カナダなど)。輝コバルト鉱は黄鉄鉱FeS2のFeをCoで,S2のうち1個をAsで置き換えたとも考えられる鉱物で,形,表面の条線などは黄鉄鉱に似るが,色は銀白色で赤みを帯びている。日本でも接触交代鉱床など比較的高温で生成した鉱床中に認められる。それらの鉱床の酸化帯にはしばしば紅色のコバルト華erythrite Co3(AsO42・8H2Oを産する。四国キースラーガーの佐々連(さざれ)・白滝両鉱床から,局部的に顕微鏡的な大きさのカロライトを産する。これは黄鉄鉱中にごく微量含まれていたコバルトが変成作用の際,局部的に濃集したものと考えられる。近年,日本ではラテライト質鉱石からニッケルを採取する際の中間産物を,フィリピンオーストラリアから輸入し,国内で処理してコバルトを生産している。この鉱石中ではコバルトは上位の褐鉄鉱帯と下位の粘土化帯の間にある黒色のマンガン酸化物に集まっている。
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