グールド(英語表記)Gould, Stephen Jay

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「グールド」の意味・わかりやすい解説

グールド
Gould, Stephen Jay

[生]1941.9.10. ニューヨーク,ニューヨーク
[没]2002.5.20. ニューヨーク,ニューヨーク
アメリカ合衆国の古生物学者,進化生物学者,著述家。『ナチュラル・ヒストリー』誌に「生命についての考察」と題するエッセーを 1974年から 2001年まで連載した。1972年ナイルズ・エルドレジとともに断続平衡説を発表。の進化は長く安定した期間と急激な種分化と形態変化を断続的にもたらすと主張,チャールズ・R.ダーウィン以来の進化論に異を唱えた。1963年にアンティオーク大学で地質学学士号を,1967年にコロンビア大学で古生物学博士号を取得。1973年にハーバード大学教授となる。著書に『個体発生と系統発生』Ontogeny and Phylogeny(1977),『パンダ親指』The Panda's Thumb(1980),『人間の測りまちがい』The Mismeasure of Man(1981),"The Structure of Evolutionary Theory"(2002)など多数。1983年全米芸術科学アカデミー会員,1989年全米科学アカデミー会員となった。

グールド
Gould, Benjamin Apthorp

[生]1824.9.27. ボストン
[没]1896.11.26. マサチューセッツ,ケンブリッジ
アメリカの天文学者。ハーバード大学卒業 (1844) 。合衆国沿岸調査委員会の経度部門の責任者 (52) ,オールバニ天文台台長 (55~59) 。 1866年海底電信によりアメリカ,ヨーロッパの2地点での太陽位置の同時観測の結果を比較し,両地点の経度差を決定。 68年アルゼンチンに招かれ,国立コルドバ天文台創設,初代台長となって南天の星表作成に尽力した (84完成) 。また4等星より明るい恒星が銀河面に対し約 20度傾いた狭い帯 (グールド・ベルト) に沿って分布していることを明らかにし,局部恒星系の構造解明に貢献した (79) 。主著『アルゼンチン天体図』 Uranometria Argentina (79) 。

グールド
Gould, Jay(Jason)

[生]1836.5.27. ニューヨーク,ロックスベリー
[没]1892.12.2. ニューヨーク
アメリカの鉄道事業経営者,金融資本家。地金,株式などの投機巨利を博した。 1863年サラトガ鉄道の支配人,68年イーリ鉄道の社長。南西部諸州の鉄道に投資してグールド組織をつくり,ウェスタン・ユニオン電信会社,ニューヨーク高架鉄道にも投資した。

グールド
Gould, Glenn

[生]1932.9.25. トロント
[没]1982.10.4. トロント
カナダピアニスト。 A.グェーロにピアノを学び,1955年デビュー。即興演奏にすぐれ,作曲家としても知られる。テンポやデュナーミクなど,まったく新しい現代的解釈を古典に持込んで話題を呼んだ。 64年以降コンサート活動を退いて録音のみに専心。

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百科事典マイペディア 「グールド」の意味・わかりやすい解説

グールド

カナダのピアノ奏者。生地トロントの王立音楽院を12歳で卒業し,14歳でベートーベンの協奏曲を弾いてデビュー。1955年に22歳でデビュー・レコード,バッハの《ゴルトベルク変奏曲》を出し一躍注目を集めた。この年全米各地でのリサイタルでも大成功をおさめ,1957年からはヨーロッパ各地でもリサイタルを開き,カラヤン指揮のベルリン・フィルハーモニー管弦楽団などと共演。しかし作品解釈の徹底に支障の多いコンサート活動に疑問をいだき,1964年からは演奏会を拒否。以後もっぱらレコーディング活動に力を注ぎ,J.S.バッハの作品を中心にテープ編集による独自のアプローチを続けた。生前は異端視されがちだったが,〈録音〉というメディアの可能性を先取りしたその演奏活動は近年あらためて注目を集めている。作曲家としても室内楽曲などを残し,著書も多い。

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精選版 日本国語大辞典 「グールド」の意味・読み・例文・類語

グールド

(Glenn Gould グレン━) カナダのピアノ奏者。バッハなどの古典音楽作品を個性的な新解釈で演奏した。一九六四年以後は演奏会を拒否し、スタジオでレコードを録音するという形での演奏に徹した。(一九三二‐八二

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デジタル大辞泉 「グールド」の意味・読み・例文・類語

グールド(Glenn Gould)

[1932~1982]カナダのピアノ奏者。バッハなどの古典音楽を個性的かつ現代的な解釈で演奏した。晩年はレコード録音に専念。

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世界大百科事典 第2版 「グールド」の意味・わかりやすい解説

グールド【Benjamin Apthorp Gould】

1824‐96
アメリカの天文学者で,地球の経度の決定に業績があった。ハーバード大学を卒業してから,ゲッティンゲンでC.F.ガウスに数学と天文学を学んだ後,アメリカ政府の沿岸測量局の経度部長(1852‐67)として,電気通信によって経度を決定する方法を開発し,ヨーロッパとアメリカの経度差を求めるために用いた。1849年には天文学雑誌《Astronomical Journal》を発刊,また,アルゼンチン共和国の依頼でコルドバ天文台を作り(1862),そこで,7万3160星の赤緯帯星表を作り(1884),3万2448星の子午線観測から一般目録を編纂(へんさん)した。

グールド【Glenn Gould】

1932‐82
カナダのピアニスト。トロント音楽院でピアノを学び,12歳で同音楽院を卒業し,14歳のときにトロント交響楽団とベートーベンのピアノ協奏曲第4番を共演してデビューした。以後カナダの各地でリサイタルを開くかたわら,R.シュトラウスなどの後期ロマン派,シェーンベルクをはじめとする第2次ウィーン楽派の音楽を学んだ。1955年にワシントンで演奏会を開き,続いてニューヨークで開いたバッハの《ゴールドベルク変奏曲》の演奏会は,センセーショナルな成功をおさめ,以後ヨーロッパやソ連で華やかな演奏会活動を続けた。

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世界大百科事典内のグールドの言及

【演奏】より

…同一の演奏を何回も再現できるレコードやテープは,コンサートでは聴きとれないような演奏の細部を拡大するため,演奏家は,1音符のミスもない正確な演奏をめざすようになった。そして20世紀後半に入ると,G.グールドのように,レコード録音でしか完璧な演奏はできないとし,コンサート活動をいっさい行わない演奏家も登場するようになった。また演奏の〈歴史主義〉は,1960年代から〈古楽〉と結びつき,中世やルネサンス時代の古い音楽を,当時の楽器やピッチ(音の高さ)や演奏習慣でそのまま再現することが広く行われるようになった。…

【音楽】より

…テープやレコードの高度な録音技術の発達は,演奏のスタイルも変質させ,演奏家たちの主要な関心は,音楽作品の全体よりもむしろ細部に向けられるようになり,精緻で正確なスタイルが好まれるようになった。ピアニストのG.グールドは,コンサートでは不正確な演奏しか可能でないと明言し,コンサートの形式を拒否して,何度も録音を取り直しながら完璧な演奏を目ざしてレコーディングに専念した。大衆社会の登場とともに出現したレコードは,〈今,ここで〉という音楽行為の一回性を否定し,W.ベンヤミン流に言えば〈アウラaura〉の消滅した新しい複製芸術のあり方を示している。…

※「グールド」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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