天の川
あまのがわ
天球上を大円(天球面上に描くことのできる最大の円)に沿って淡く光る帯をいう。英語ではミルキー・ウェイMilky Way。いて座付近でもっとも明るく幅も広い。七夕(たなばた)の牽牛(けんぎゅう)星(アルタイル)と織女(しょくじょ)星(ベガ)の間を流れ、カシオペヤ座からオリオン座の北を通り、みなみじゅうじ座に至る。天体望遠鏡で見ると銀河系を構成する微光星の群れであることがわかる。天の川は天の河とも書き、天の戸河(あまのとかわ)、天の安の河(あめのやすのかわ)ともいう。いずれも文学的名称で『古事記』『万葉集』にすでにあり、七夕伝説は『万葉集』『竹取物語』など多くの作品にみられ、中世文学の好題材となった。
[大脇直明]
『アイザック・アシモフ著、小原隆博訳『天の川と銀河系』(1990・福武書店)』▽『ルドルフ・キッペンハーン著、祖父江義明訳『宇宙とその起源――銀河からビッグバンへ』(1991・朝倉書店)』▽『桜井邦朋著『宇宙論入門15講――現代の宇宙像を探る』(1994・東京教学社)』▽『藤井旭著『宇宙の始まりの星ものがたり――宇宙の始まりの神話を楽しもう』(1995・誠文堂新光社)』▽『Richard Fifield著、土井恒成編訳『何が宇宙をつくっているか――暗黒物質からクォークまで』(1997・丸善)』▽『藤井旭著『宇宙への招待』新版(1999・河出書房新社)』▽『藤井旭著『宇宙探検――そこが知りたい!宇宙の秘密』(2002・偕成社)』▽『奥田治之・祖父江義明・小山勝二著『天の川の真実 超巨大ブラックホールの巣窟を暴く』(2008・誠文堂新光社)』▽『ニュートン プレス編『よくわかる天の川銀河系』(2008・ニュートン プレス)』▽『佐藤勝彦監修『最新宇宙論と天文学を楽しむ本――太陽系の謎からインフレーション理論まで』(PHP文庫)』
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デジタル大辞泉
「天の川」の意味・読み・例文・類語
てん‐の‐かわ〔‐かは〕【天の川】
奈良県南部、山上ヶ岳などに源を発し、南西に流れる川。十津川上流部。あまのかわ。
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天の川【あまのがわ】
銀河系の渦巻の縁辺が,地上からは天上を流れる川のように見えることからついた名。古代中国では漢水の気が天に上って銀河になったと考えて銀漢,河漢と呼び,日本に伝わって天河,天漢などの字が使われた。銀河を川に見立てることは世界の諸民族に共通してみられ,ギリシア神話では女神ヘラの乳がほとばしってできたといい,ガラクシアス(乳の川)と呼んだ。英語のMilky Wayはこれに由来。
→関連項目銀河
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あまのかわ あまのかは【天の川】
吉岡禅寺洞を中心とする俳句雑誌。大正七年(一九一八)創刊、昭和一九年(一九四四)休刊、同二二年復刊。「ホトトギス」系俳誌として出発。昭和一〇年代に新興俳句の有力誌となり、戦後は口語自由律に転じた。
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天の川
バラの園芸品種名。木立ち性で中輪、明るい黄色の一重咲きの花をつける。四季咲き。作出国は日本。
天の川
長崎県、天の川酒造株式会社が製造する麦焼酎。2年貯蔵酒を中心に、15年、30年貯蔵の古酒もある。
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天の川 (アマノガワ)
学名:Prunus lannesiana
植物。バラ科の落葉小高木
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あまのがわ【天の川】
銀河系宇宙の星の渦巻の縁辺が,天上を流れる川のように見えるための名。《万葉集》の七夕歌には〈天河,天漢〉の文字をあて,《和名抄》に〈天河,天漢,銀河,阿万之加八〉とあるのも,主として漢名を伝えたもので,古代中国では,天の川を漢水の気が天にのぼってなったと考え,〈銀漢〉または〈河漢〉とも呼んでいた。しかし,日本でもおそらく古くからこれを天上の川とみていたものであろう。そして中国伝来の七夕説話により民衆に親しいものとなって,例えば奄美大島に残る天人女房型説話では,妻を追って天へのぼった男が,天神からテストを受けたとき,あやまってウリを縦に割ったため中から大水がわき,それが天の川となり,夫妻は間を隔てられて牽牛(けんぎゆう)・織女2星となったとある。
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世界大百科事典内の天の川の言及
【七夕】より
…また7月7日は北斗七星の第一星である魁星(かいせい)の神の誕生日だとされ,魁星が文運,とくに科挙の試験での運不運を支配すると信じられたところから,近世の読書人たちは七夕に魁星を祭った。【小南 一郎】
[日本の民俗]
日本の七夕の行事はこの夜,天の川の両岸に現れる牽牛星(わし座の首星アルタイル。彦星,犬飼星)と織女星(こと座の首星ベガ)とが鵲の翼を延べたのを橋として天の川を渡り相会うという,中国の伝説を受けいれたことから興った。…
【乳】より
…乳児によって乳首を吸われる刺激だけでなく,外出から帰宅してわが子の顔を見たり泣声を聞いたりしても,このホルモンが分泌されるので,乳首から乳汁がほとばしって出てくる(神経内分泌反射)。ギリシア神話の女神ヘラの乳首がヘラクレスに吸われて乳をほとばしらせ,〈天の川〉(ラテン語でVia lactea,英語でMilky Way。いずれも〈乳の川〉の意)になったと伝えられるのも,この射出反射による。…
【ユリ(百合)】より
…その拍子に乳がほとばしって天と地に散った。前者が天の川になり,地上に滴ったところからユリが生えたという。ローマ人も女神ユノ(ギリシアのヘラ)の聖花としてこれを賛美し,希望のシンボルであると同時に王位継承者の印ともなった。…
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