クーザン(Victor Cousin)(読み)くーざん(英語表記)Victor Cousin

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

クーザン(Victor Cousin)
くーざん
Victor Cousin
(1792―1867)

フランスの哲学者。パリ生まれ。ソルボンヌ大学で哲学を講じ、のちエコール・ノルマル・シュペリュール(高等師範学校)校長。1830年からの七月王政のもとで貴族院議員文部大臣などを務めた。ライプニッツに由来する彼の座右銘「諸体系はそれらが肯定することによって真であり、それらが否定することによって偽である」の示すごとく、彼の哲学は、先人たちの肯定する諸学説を相互に矛盾なく総合、統一することを目ざす折衷主義である。その体系は、デカルト、メーヌ・ド・ビラン、スコットランド学派、ドイツ観念論(とくにヘーゲル)などの折衷であり、感覚論、観念論、懐疑主義、神秘主義などの諸要素を含む。『近世哲学史講義』5巻(1841~1846)によって、フランスに初めて哲学史の領域を確立したことでも知られる。『真善美について』(1853)などの著書がある。

[足立和浩 2015年5月19日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例