クリプトコックス髄膜炎

内科学 第10版 「クリプトコックス髄膜炎」の解説

クリプトコックス髄膜炎(真菌感染症)

(1)クリプトコックス髄膜炎(cryptococcal meningitis)
概念
 真菌性髄膜炎は,緩徐な経過を示し,ときに脳実質内に肉芽腫や膿瘍を形成したり,血管内に侵入して血栓動脈瘤を生じることがある.起炎菌は,クリプトコックスが最も多いが,そのほかにカンジダ,アスペルギルス,ムコールがある.ステロイドや免疫抑制薬の長期投与,AIDSなどに伴い,その発生頻度は増加している.30~50%はAIDS,白血病,腎不全膠原病,糖尿病などの基礎疾患を有する.クリプトコックス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)は,鳥の排泄物,特にハトの糞で増殖することが知られている.
臨床症状・検査成績
 クリプトコックス髄膜炎は,亜急性,慢性髄膜炎の臨床経過をとることが多い.脳実質内に肉芽腫を形成する場合は,髄膜刺激症状に加えて脳局所症状を呈する.この場合,頭部CTやMRIで占拠性病変として描出され,造影剤による増強効果を有する.髄液圧は上昇し,単核球優位の細胞数増加,蛋白上昇,糖の減少など結核性髄膜炎に類似した所見を示す.
診断
 髄液中の菌の検出が重要で,特に,墨汁染色で莢膜を有するC. neoformansを証明する(図15-7-13).深在性真菌感染症は一般に血液および髄液培養の陽性率が低く,抗原・抗体を検出するラテックス凝集反応も一般化している.
治療
 アムホテリシンBの点滴静注を行う.10 mg/日より始め,約1週間で0.5~1 mg/kg/日まで漸増する.最近はアムホテリシンBリポソーム製剤が発熱悪寒などの急性期副作用や腎機能障害の頻度が少なく頻用される.この際,2.5 mg/kgを1日1回,1~2時間以上かけて点滴静注する.症状に応じ5 mgないし6 mg/kgまで増量できる.このときフルシトシン(5-FC,経口)の併用が推奨されている.しかし,最近では,副作用が比較的少なく,髄液への移行がよいフルコナゾールが使用されることが多くなっている.400 mg1日1回点滴静注あるいは経口を10~12週間継続する.[津川 潤・坪井義夫]

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

世界大百科事典(旧版)内のクリプトコックス髄膜炎の言及

【クリプトコックス】より

…この病原菌は,鳥類の糞や土壌中に広くみいだされ,呼吸器官を通じてヒトの体内に侵入する。したがってクリプトコックス症では,まず肺が侵され,後に血行性のクリプトコックス髄膜炎が引き起こされる。この病原菌は,通常の真菌培地で容易に培養できるので,培養菌を用いて診断を行うことができる。…

【髄膜炎】より

…抗結核剤により強力な治療を行う。
[クリプトコックス髄膜炎cryptococcus meningitis]
 クリプトコックスCryptococcus neoformansによる感染症で,神経系の真菌症のなかでは最も頻度が高い。この病原体はハトなどの鳥の排出物に含まれており,おそらくヒトに吸入されて気道から侵入するものと考えられている。…

※「クリプトコックス髄膜炎」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」