日本大百科全書(ニッポニカ) 「クスクス(料理)」の意味・わかりやすい解説
クスクス(料理)
くすくす
北アフリカの名物料理。スパゲッティの原料ともなるデューラム・セモリーナなどの硬粒種の小麦粉にアワやトウモロコシなどの粉を混ぜ合わせて湿り気を与え、細かい粒状にして乾燥させたクスクスムールと称するパスタの一種がおもな材料で、アフリカ大陸の地中海沿岸西側の諸国では主食として食べられており、日本のご飯の感覚に近い。クスクスムールは乾燥させた後、蒸し、再度乾燥させて粉粒状に精製する。調理法としては、蒸したり、炒(いた)めたりして用いるが、精製途中で一度火を通しているため、ふやかしただけでも食べることができる。一般的には、このクスクスにトマトベースのシチューなどの煮込み料理や肉や魚の入ったスープをかけて食べる。また、カバブとよばれる肉の串(くし)焼きをのせて食べたりもする。アフリカでは、クスクスシェールとよばれる2段になった専用の蒸し鍋(なべ)を用い、下鍋で野菜や肉を煮込みながら、その蒸気で上鍋のクスクスを蒸すという合理的な調理法でつくられる。下鍋のシチューやスープの風味をつけてクスクスを蒸しあげることができ、調理効果は高い。また、クスクスにサフランやバラで香りづけをしたものもある。ヨーロッパ諸国にも普及し、クスクスを使ったサラダなどが食べられており、日本でもなじみの食材になりつつある。
[田中伶子]
『主婦の友社編集部編『料理食材大事典』(1996・主婦の友社)』▽『吉田集而編『講座 食の文化――人類の食文化』(1998・味の素文化センター)』