クジャクサボテン(読み)くじゃくさぼてん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「クジャクサボテン」の意味・わかりやすい解説

クジャクサボテン
くじゃくさぼてん

サボテン科(APG分類:サボテン科)の多肉植物。エピィフィルム属Epiphyllumとノパールホッキア属Nopalxochiaおよびその近縁の数属とそれらの雑種の総称。数百の品種がある。葉はない。若い茎は多肉質で柔らかく、コンブ状に扁平(へんぺい)で側縁は波打ち、そのうねの谷に刺座と称する部分がある。刺座には短毛がみられるが、刺(とげ)を欠く。花は2年枝以上の刺座から出て径10センチメートルを超すラッパ咲きの大輪で美しい。エピィフィルム属の花筒は花弁より長いが、ノパールホッキア属は短く、雑種のクジャクサボテンはその影響を受け筒長が短い。花は昼咲きで、金属性の光沢があり、花色は赤、紅、紅紫、紫、桃、橙(だいだい)、黄、白と豊富である。

 原種はメキシコからブラジルなどに分布するが、中央アメリカの熱帯林に多く、樹木や岩に着生する。19世紀から属間交雑が進められたが、その中心になったのはノパールホッキア・フィラントイーデスN. phyllanthoides Br. et R. とヘリオセレウス・スペキオーススHeliocereus speciosus Br. et R. である。排水のよい用土に植え、夏は半日陰に置き、そのほか季節は十分日に当てて育てる。暖地では無加温でも越冬する。冬期に水をきると花つきがよい。繁殖は挿木による。

[湯浅浩史 2021年2月17日]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「クジャクサボテン」の意味・わかりやすい解説

クジャクサボテン
epiphyllum; orchid cactus

中南米原産のいくつかの森林性着生サボテンを交配して作出されたサボテンの一群。 1000をこえる品種がある。平たい多肉質の葉状茎赤色や桃色,白色,黄色,紫紅色など,多彩で色鮮かな美しい花を咲かせる。春に開花し,夏に生育,冬の低温と乾燥で休眠する。休眠後に花芽分化するため,温室などで暖かすぎる状態で冬越しをさせると,翌年の花がみられない。水はけのよい用土を使って鉢植えし,春と秋はよく日に当て,夏は半日陰で管理。冬は軒下または暖房をしない室内などで,0~5℃程度の低温に保つ。冬期は水を断ち,生長期も過湿に注意する。

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世界大百科事典(旧版)内のクジャクサボテンの言及

【サボテン】より

…メキシコのオキナマル(翁丸)Cephalocereus senilis (Haw.) Pfeiff.(イラスト)や南アメリカのオイラク(老楽)Espostoa lanata Br.et R.は白毛が密生し,毛柱類(けばしらるい)の名がある。一方,木や岩に着生する森林着生サボテン類には,夜咲群に3稜ではうサンカクチュウ(三角柱)Hylocereus guatemalensis (Eichl.) Br.et R.,白い花が直径30cmを超すヨルノジョオウ(夜の女王)Selenicereus pteranthus (Lk.et O.) Br.et R.,茎が扁平の月下美人(イラスト),昼咲群にはクジャクサボテンEpiphyllum(イラスト)やシャコバサボテン(イラスト),紐状に垂れるキンヒモ(金紐)Aporocactus flagelliformis (L.) Lem.がある。リプサリス属Rhipsalisも着生するが,花は小さく果実は漿果(しようか)で,アフリカ,マダガスカル,スリランカの旧大陸にも自然分布する唯一のサボテンである。…

※「クジャクサボテン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」